こんにちは。元カーディーラー営業マンです。突然ですが、皆さんは車のことを検討するとき、誰に相談しますか?ご家族や友人以外では、カーディーラーの営業マンか、町のモータースに相談される方が多いと思います。
近所のモータースは、ディーラーが定休日の平日にも開いていますし、営業時間外でも「近所のよしみ」で故障した車を見てくれることもあります。そしてカーディーラーの営業マンにとって、町のモータースはライバルであり、同時にパートナーでもある——これが現場の実感です。
今回は35年以上の営業マン経験をもとに、町のモータースの実像と、ディーラー営業マンとの意外な関係を本音で解説していきます。
町のモータースとは?特徴と業務内容
「町のモータース(自動車整備工場・販売店)」とは、地域に密着して自動車の整備・車検・修理・新車/中古車販売などを行う、比較的小規模な民間の自動車業者のことです。「〇〇自動車」「〇〇モータース」といった名前のお店が多く、メーカー直営や専属販売店であるディーラーとは違う魅力を持っています。
- 全メーカー・全車種の取り扱い:トヨタ、日産、ホンダ、軽自動車から輸入車まで、メーカーを問わず修理や販売を行う
- 地域密着型:顧客の多くが近隣の住民で、何世代にもわたる付き合いも珍しくない
- ワンストップサービス:整備から車検、販売、保険まで、車のあらゆる窓口になってくれることが多い
「指定工場」と「認証工場」の違い
モータースには法律上、2つの種類があります。
- 指定工場(民間車検場):工場内に車検の検査ラインを持っていて、その場で車検を完了できる。比較的規模の大きいモータースに多い
- 認証工場:ブレーキやエンジンなどの重要な分解整備はできるが、車検のときは陸運局に車を持ち込む必要がある
実は私の友人も、父親・母親・長男の家族3人で認証工場を営んでいます。車検のたびに15kmほど離れた陸運局まで車を持ち込むのですが、父親と長男の2人で多いときは1ヶ月に50台ほどの車検をこなしていたというから驚きです。ディーラーとはまた違う苦労が、町のモータースにはあります。
なぜ「あえてモータース」を選ぶ人がいるのか|5つの理由
豪華なショールームとメーカーの看板を持つディーラーではなく、あえて町のモータースを選ぶ人には、はっきりした理由があります。
①費用が安く、見積もりの融通が利く
ディーラーに比べて基本工賃(レバレート)が低く設定されていることが多く、部品交換も高価な「純正新品」一択ではありません。性能が変わらず安い「社外優良品」や、再生部品の「リビルト品」、中古部品まで、予算に応じて柔軟に提案してくれます。
そして何より大きいのが、本当の意味での「修理」をしてくれること。ディーラーなら「アッセンブリー(部品丸ごと)交換で10万円です」と言われるような故障でも、モータースの職人なら「この中の小さな部品だけ換えれば数千円で直るよ」と直してくれることがあります。私の友人の工場でも、多少精度は落ちるものの安価な海外製部品で故障をしのいでもらったことがあります。こういう選択肢を出してくれるのがモータースの強みです。
②全メーカー対応だから窓口を一本化できる
家族でトヨタのミニバンとホンダの軽自動車を持っている場合、ディーラーだとそれぞれの店舗に持っていく必要があります。モータースならメーカーを問わず、家族の車をすべて1箇所で面倒を見てもらえます。乗り換えの際も特定メーカーに偏らず、「次は〇〇の軽が燃費も良くて故障も少なくておすすめだよ」と、プロの中立的な意見を聞けるのも大きな魅力です。
③「顔の見える付き合い」とスピード感
ディーラーではフロント(受付)と実際に作業する整備士が分かれていて、しかも担当者は数年で異動してしまうのが一般的です。モータースはいつも同じ社長やベテラン整備士が対応してくれるので、「前回の車検で〇〇を換えたから、今回はここを見ておこう」と、車の歴史をすべて把握した「車の主治医」になってくれます。
「ちょっと変な音がする」というとき、「来週の予約を取ってください」ではなく、その場ですぐ見てくれるスピード感も、大手にはない良さです。
④持ち込みパーツの取り付けを歓迎してくれる
ネット通販で安く買ったドライブレコーダーやタイヤ、カーナビは、ディーラーでは「持ち込みお断り」か、工賃が通常より高く設定されるケースがほとんどです。モータースは「工賃さえもらえれば持ち込み大歓迎」という店舗が多く、ネットで安くパーツを買い、取り付けだけプロに任せるという賢い維持の仕方ができます。
⑤損得勘定だけではない、地域密着の手厚さ
「バッテリーが上がった」というときに積載車でパッと駆けつけてくれたり、「おじいちゃんの代から付き合いがあるから端数はオマケしておくよ」といった、大手には真似できないアットホームな対応。車の維持に「実利」と「人情」の両方を求める人にとって、モータースは非常に魅力的な存在です。
ディーラー・モータース・カー用品店の違い(早見表)

| 項目 | ディーラー | 町のモータース | カー用品店・車検専門店 |
|---|---|---|---|
| 費用 | 高め | 比較的安め | 安め |
| 得意な車 | 自社ブランド車(最新型も◎) | 全メーカー(国産〜輸入車) | 一般的な国産車 |
| 対応の柔軟性 | マニュアル通り(新品交換中心) | 非常に高い(修理・中古品対応) | 一定(消耗品交換中心) |
| 店舗の雰囲気 | 綺麗、接客が丁寧 | アットホーム、職人気質 | 明るい、利用しやすい |
注意点と、良いモータースの選び方
店舗による「当たり外れ」の差が大きい
ディーラーのような一律の接客サービスは期待できない場合が多く、良くも悪くも職人気質な頑固親父の工場から、非常に綺麗で先進的な工場まで様々です。また代車も、古い軽自動車や型落ちの車であることが多いです。ちなみに最近のディーラーは代車そのものを新型車にして試乗車代わりに活用し、お客様の購買意欲を高める傾向にあります。代車は2〜3年後に自社の中古車センターで販売するという、効率的な流れになっているんです。
選び方の4つのチェックポイント
- ①認証・指定のマークがあるか:「〇〇運輸局長認証工場」などの黄色や緑色の看板は、法律で定められた整備を行うための必須条件です
- ②工場内が整理整頓されているか:工具や部品が散乱していない工場は、作業も丁寧で信頼できる可能性が高いです
- ③説明が丁寧で明朗会計か:事前に見積もりを出し、なぜその修理が必要か、安く済ませる方法(リビルト品の使用など)があるかを説明してくれる店舗を選びましょう
- ④口コミや地域の評判:近所の評判やGoogleマップの口コミで「親切に対応してもらった」という声が多いところは安心です
車にあまり詳しくない人こそ、何でも気軽に相談できる「主治医」のようなモータースが近くにあると、カーライフは非常に心強くなります。
関連記事:車検の選択肢については30分スピード車検って本当に大丈夫?ディーラー車検との違いを徹底比較もご覧ください。
【裏話】新車のマージン構造はこんなに違う
ここからは元営業マンならではの裏話です。実は、新車販売の「マージン率(粗利率)」は、正規ディーラーと町のモータースとで構造が大きく異なります。
- カーディーラー:約10〜15%(高級車や人気車種は高め)。メーカーから直接仕入れるため基準マージンは高く、300万円の車ならおよそ30万〜45万円が粗利のベース。ここから値引きで削られます
- 町のモータース(サブディーラー):約7〜8%。ディーラーから「業販価格(卸値)」で仕入れるため、ディーラーの利益が乗った分、手元に残るマージンは半分以下になるのが一般的。ここからさらに値引きで削られます
- サブディーラーでないモータース:新車販売ごとの紹介料となり、実質1台あたり2万〜3万円が相場です
なぜマージンが低くても経営できるのか
車両本体のマージンだけ見ればモータースは圧倒的に不利です。それでも成り立つのには、3つの理由があります。
理由1:莫大な店舗維持費・人件費がかからない。ディーラーは一等地の広い敷地、豪華なショールーム、おもてなしのスタッフ、試乗車・展示車、大量の広告費と、「ブランド維持のコスト」が重くのしかかります。高いマージンを確保しないと赤字になるのはこのためです。一方モータースは、もともとある整備工場をベースに少人数で運営しているため固定費が圧倒的に安い。先ほどの私の友人の認証工場も家族3人の経営で、月30〜50台の車検に一般修理、板金の受付、さらに新車販売までこなしますから、十分に経営が成り立ちます。
理由2:「純正オプション」に頼らない利益の出し方。新車販売で車両本体よりマージン率が高い(30〜40%以上とも)と言われるのが、カーナビやドライブレコーダーなどのオプション品です。ディーラーは利益率の高い純正オプションを定価近くで販売しますが、モータースは性能の変わらない安価な社外品を自社で安く仕入れて取り付けます。仕入れ値と工賃を自由にコントロールできるので、本体のマージンが薄くても賢く利益を確保できるのです。
理由3:目的が「販売」ではなく「その後の整備の囲い込み」。モータースにとって新車販売は、いわば「未来の車検・点検・修理のお客さんを増やすための種まき」です。販売時のマージンが数万円でも、その後5年、10年と車検やオイル交換、修理(これらは利益率が高い)を任せてもらえれば、トータルで大きな利益を生むビジネスモデルなのです。
値引き交渉への影響
このマージン構造の違いは、新車を買うときの値引きにも影響します。
ディーラーの場合:もともとのマージン幅が広いため、交渉次第で車両本体から大きな値引きを引き出しやすい傾向があります。決算期などはメーカーの支援金で、驚くような値引きが出ることもあります。
町のモータースの場合:利幅が薄いため本体からの大幅値引きは構造的に難しいのですが、そもそも業販価格で仕入れているため、最初からある程度安い価格を提示してくれることが多いです。さらに「ドラレコをサービスで取り付ける」「社外品ナビを安く付ける」といった、工賃やサービス面での実質的な値引きを得意としています。
関連記事:ディーラーでの値引きの仕組みは新車値引きの限界額とは?、決算期の値引きについては車は決算期に買うと本当に安いのか?で詳しく解説しています。
営業マンにとってモータースは「ライバルであり神様」

最後に、今回のテーマである「カーディーラー営業マンと町のモータースの関係」を、現場の実感でお話しします。
正直に言えば、商談中のお客様をモータースに取られてしまうこともあります。その意味では確かにライバルです。ところがその一方で、月末どうしても数字が足りないとき、自分が担当するモータースから「お客さん紹介するよ」という神様のような電話をいただくこともあるのです。営業マンにとって業者さんとの繋がりがどれほど大事かは、ノルマ事情の記事でも書いた通りです。
それだけではありません。ディーラーの定休日や早朝・夜間に起きたお客様の車のトラブルを、近所のモータースさんが代わりに対応してくださったことも数え切れません。地域密着のご近所さんだからこそできる、ディーラーには難しいサポートです。
まとめ|実利と人情、あなたはどちらを重視しますか
- カーディーラーを選ぶ人:最新の設備、ブランドの安心感、手厚いおもてなしを重視する
- 町のモータースを選ぶ人:費用の安さ、長く付き合える信頼関係、マニュアルに縛られない柔軟さを重視する
どちらが正解ということはありません。大切なのは、あなたのカーライフに合った「相談相手」を持つことです。そしてディーラーとモータースは、対立する存在ではなく、地域のお客様のカーライフを支え合う存在でもあります。元営業マンとして、今後もディーラーと町のモータースが良い関係を続けて、お客様の役に立つ存在であり続けることを願っています。
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この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

