こんにちは。元カーディーラー営業マンです。突然ですが、皆さんは人の顔を覚えるのが得意なタイプですか?それとも苦手なタイプですか?
私はどちらかというと、人の顔を覚えるのは苦手なほうでした。営業マンなのにお恥ずかしい話ですが、お客様の顔よりも「乗っている車のタイプや色」で覚えていたお客様もいたくらいです。「シルバーのミニバンの〇〇様」という具合ですね。なんだか営業マンとしては全然ダメですね(笑)。
その反面、何年たっても忘れられない、すごく印象に残っているお客様もいらっしゃいます。同じ大切なお客様なのに、この違いはいったい何なのか。今回は35年以上の営業マン経験を振り返りながら、その理由を本音でお話しします。後半では、実際に私の記憶に深く刻まれている3人のお客様の実話もご紹介します。
結論:印象に残らないのは「すんなり買ってくれたありがたいお客様」
結論から言います。営業マンの記憶に残りにくいのは、新規でご来店いただき、1〜2回の商談ですんなり買ってくださった、非常にありがたいお客様なんです。
「え?そんな良いお客様こそ大事にすべきでは?」と思いますよね。おっしゃる通りです。ではなぜ、そのありがたいお客様が営業マンの印象に残らないのか。それは、店舗や営業マンよりも「車そのもの」を気に入って購入される場合が多いからです。
手間がかからない=接点が少ない
こういったお客様には、次のような特徴があります。
- 特に値切るわけでもなく、1〜2度の条件提示(値引きの提示)であっさり購入される
- 納車後もよほどのことがない限りトラブルがない
- 点検や車検もご自分で予約して、サービス部門だけで完結して帰られる
- 営業マンとゆっくり話す機会がほとんどない
営業マンからすると、本当に手間のかからない超優良なお客様です。ですが「手間がかからない」ということは、裏を返せば「接点が少ない」ということ。商談から納車、その後のカーライフまで含めて、営業マンと顔を合わせる回数が圧倒的に少ないので、失礼ながら記憶に残りにくいのです。
実は一番「他メーカーに移りやすい」お客様でもある
そしてここに、営業マン側の課題もあります。こういったお客様は根本的に「車を気に入って」買ってくださったお客様です。つまり、他メーカーから気に入った車が発売されれば、次はそちらへ移られることが多いのです。
乗っていただいている間に営業マンや店舗とのつながりができないと、次の乗り換えにはつながりません。お店側から見ると「静かに来て、静かに去っていく」お客様。ありがたいけれど、切ない存在でもあるんです。
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最悪のスタートが最高の思い出に変わった、Cさんの話

逆に、最初は最悪のスタートだったのに、結果的に良いつながりになった事例をお伝えします。
Cさんとの出会いは、提携先の板金塗装工場の社長からの紹介でした。「ご近所のCさんに、福祉車両の軽乗用車を勧めてほしい」と頼まれたのです。Cさんは当時、県立病院に入院中。病院までカタログと見積書を届けるように、とのことでした。ご提案する車は、手動運転補助装置付きの福祉車両。左手だけでアクセルとブレーキの操作ができる車です。
Cさんは病気により下半身不随となり、足でのアクセル・ブレーキ操作ができなくなっていました。何度か手術を受けられましたが、良い結果にはならなかったそうです。病気になる前は大型バイクに乗るのが趣味の、とてもアクティブな方だったと聞いていました。
「何しに来た、帰れ!」から始まった商談
Cさんの病室まで行き、パンフレットを片手に説明しようとしたところ、返ってきた言葉は「何しに来た、帰れ!」。商談になりません。おかしいな、板金工場の社長の紹介なのに話が違うぞ……と、その日はいったん帰りました。たまたまタイミングが悪かったのかと思い再度挑戦しても、結果は同じ。
そんなことを何度か繰り返すうちに「これはとうてい無理だ」と思い、板金工場の社長に断りの電話を入れました。「この商談は私には無理みたいです」と伝えると、社長は「まあそう言わんと頑張ってみい」と、気の抜けた返答。社長もそう言ってるし、ダメもとで行くしかないか……と腹をくくって病院に通ううちに、少しずつ商談は進んでいきました。
納車後に少しずつ縮まった距離
そして契約までしたものの、Cさんは私には全然心を開いてくれません。やがてCさんは退院され、手動運転補助装置付きの福祉車両をご自宅に納車しました。操作説明は主に奥さんにしましたが、Cさんはノーリアクションでした。
納車後も心配だったので、何度か操作説明に伺いました。そのうちに、少しずつCさんとの距離が縮まっていったのです。Cさんは病気になる前は大型バイクを操るほど元気だった方です。下半身不随になった現実をすぐには受け入れられず、行き場のない感情を周りの人にぶつけていたようでした。
やがてCさんは現実と向き合い、「手動運転補助装置付きの車を使った生活にチャレンジしていこう」という前向きな気持ちになってくれました。その後は各点検も、ご自分で運転してディーラーまで来てくれるようになりました。嬉しそうに「ホームセンターまで奥さんと一緒に買い物に行って来た」と話してくれたCさんの笑顔は、今も忘れません。
事故対応をきっかけに180度変わった、Mさんの話

次はMさんの話です。Mさんはお父様が当社のお客様で、点検や車検の際にはお父様の代わりによく来店されていました。Mさんご自身も自動車保険は当社で加入されていましたが、乗っているのは他メーカーの車。そして来店されたときはいつも不機嫌で、顔を合わせれば文句ばかり。正直、かなり気難しい、対応の難しいお客様でした。
関係が変わったきっかけは自動車事故
そんなMさんとの関係が180度変わるきっかけがありました。それは自動車事故です。Mさんから事故の連絡を受け、たまたま現場に行ける余裕があった私は、すぐに駆けつけました。事故現場で不安そうにしているMさんから状況を詳しく聞き、警察の実況見分も終わっていたので、保険会社への連絡から修理工場の手配までを行いました。幸い車は自走できる軽傷で、Mさんにも相手の方にもお怪我はありませんでした。
その後、Mさんからは私の携帯電話に、車の相談の電話がよくかかってくるようになりました。ショールームに来店されても普通に雑談をするようになり、お父様の車をMさんが引き継いで乗ってくれたり、奥さんの車を増車してくれたり。今では私の後任の営業マンとも仲良くしていただいています。
後からわかったことですが、最初に不機嫌だった理由は「他メーカーの車で来店して自動車保険の継続手続きをして帰るとき、スタッフから変な目で見られている気がする」という思い込みからだったそうです。困ったときに駆けつけてくれた、という体験ひとつで、お客様との関係はここまで変わるものなんです。
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30年たっても忘れられない、Sさんとの不思議な1日

最後に、私の長い営業マン経験の中でも特に不思議な体験をお話しします。今から30年ほど前、Sさんという初老の男性に、新規のご来店で車を買っていただきました。
納車後、午前11時頃にご自宅へ調子伺いに行ったところ、「せっかくだからまあ上がれ」と家に招き入れられ、世間話に。そのうち「昼ご飯を一緒に食べに行こう」と誘われ、近所の有名なうどん屋さんへ。続いて「コーヒーでも飲みに行こう」と喫茶店へ。ちなみにここまでのお代は、すべてSさんが出してくださいました。
ようやく次のお客様のところへ行けると安心した矢先、「まあ上がれ」と再度家の中へ。小一時間の世間話のあと席を立とうとしたら、今度は近所の日本料理店で天麩羅をご馳走になり、その次はSさんが経営するスナックへ。会社に戻ったのは夜の9時過ぎでした。費用はすべてSさん持ち。私のことを気に入ってくださったのでしょうか?まる1日ひとりのお客様と一緒に過ごしたのは、後にも先にもSさんだけです。
Sさんはその後遠方へ転出されたので、お付き合いはそこまででしたが、今でも「不思議な体験」として強烈に記憶に残っています。
まとめ:営業マンとの距離感は人それぞれ。でも遠慮はいりません
すんなり買ってくださる超優良なお客様ほど、実は営業マンの印象に残りにくい。一方で、最初は「帰れ!」と怒鳴られたCさん、文句ばかりだったMさん、まる1日離してくれなかったSさんのように、濃い接点があったお客様は何十年たっても忘れられない。営業マンの記憶とは、つくづく「顔を合わせた回数と密度」でできているのだと思います。
お客様それぞれに、営業マンとの心地よい距離感があると思います。べったり付き合いたい方もいれば、必要なときだけ連絡したい方もいる。それでいいのです。ただ、ひとつだけお伝えしたいのは、遠慮せず何でも相談していただければ、営業マンはお客様のニーズに合う提案をしようと頑張るということです。
相談すればするほど、営業マンはあなたのことを覚え、あなたに合った情報を持ってきてくれるようになります。人生相談は無理でも、車の相談なら何とかなります(笑)。どうぞお気軽に、担当の営業マンにお申し付けください。
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自動車保険は比較で安くなる!この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

