再雇用後は5年間が大変な理由を元カーディーラー営業マンが解説

再雇用のリアル
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皆さんこんにちは。皆さんは、年金はいつから受け取るか考えていますか? 多くの方が「65歳から」を前提にされているのではないでしょうか。

私の職場には、在職老齢年金をもらいながら元気に働いている先輩が何人もいます。その姿を見ていると、60歳〜65歳の高年齢雇用継続給付をもらいながら働いている今の私のスタイルが、なんとも中途半端に思えてくるのです。同じように感じている方も多いのではないでしょうか。

私は3年前に35年以上勤めたカーディーラーで定年を迎え、今は再雇用で別部署に勤務している63歳です。この記事では、再雇用後の最初の5年間(多くは60歳〜65歳)がなぜこんなに大変なのか、そして「残業すればするほど手取りが増えない」というこの期間だけの不思議な仕組み、さらに65歳を過ぎると景色がガラッと変わる理由までを、制度の話と自分の実感の両方から書いていきます。

最後に、私なりの解決策もお伝えします。結論から言うと、この5年間は「残業で稼ぐ」よりも「時間を使って稼ぐ」ほうが、制度上どう考えても得です。

  1. 再雇用後の5年間が「大変」と言われる5つの理由
    1. 理由① 収入が3〜5割下がる
    2. 理由② 立場が入れ替わる「ねじれ現象」
    3. 理由③ 役割があいまいで、やりがいが薄くなる
    4. 理由④ 体力が現役時代のペースについてこない
    5. 理由⑤ 1年ごとの契約更新という心細さ
    6. 乗り越えるための3つのポイント
  2. 最大の落とし穴|残業すると国からの手当がカットされる
    1. そもそも「高年齢雇用継続給付」とは
    2. なぜ残業すると減るのか|残業代も「その月の賃金」に入る
    3. 決定的な差は「税金がかかるかどうか」
    4. 【要注意】2025年4月から給付率は最大10%に縮小されました
    5. とはいえ、自分だけ定時で帰るには勇気がいる
  3. 65歳を過ぎると景色が変わる|在職老齢年金の世界へ
    1. カットが始まる基準は「月額65万円」
    2. 判定に使う「2つの金額」と計算式
    3. 賞与がある人は「毎月の枠」が減ります
    4. 枠を超えたらいくら減るのか(計算例)
    5. カットされるのは「老齢厚生年金」だけ
  4. なぜ国は基準を50万円台から65万円へ一気に上げたのか
    1. ① 労働力不足と「支え手」の確保
    2. ② 「働くと損をする」という就業調整の解消
    3. ③ 年金財政への影響が限定的だから
  5. 国の方針は「若いうちは自助、高齢期は長く働く」へ完全に切り替わった
  6. 長く働くことのメリットとデメリット
  7. 「元気なうちに年金をもらいながら働く」は理にかなっている
    1. 理由① 健康寿命の間に使えるお金が増える
    2. 理由② 「早死にリスク」への最大の防衛になる
    3. 理由③ もらいながら、将来の年金も増やせる(在職定時改定)
    4. でも、わずかでも馬鹿にできない理由
  8. 60〜65歳の答えは「残業」ではなく「副業」
    1. なぜカットの対象にならないのか
    2. 唯一の例外|副業先でも雇用保険に入る場合
    3. 確定申告は「所得」が20万円を超えたら
    4. フリーランス収入なら、65歳以降も年金はカットされない
    5. ただし、年金以外への影響はあります
  9. まとめ|収入が減った分、時間が手に入っている

再雇用後の5年間が「大変」と言われる5つの理由

定年後の再雇用で、特に最初の5年間が辛いと感じられるのは、環境・労働条件・気持ちのギャップが、この時期に一気に集中するからだと思います。ひとつずつ見ていきます。

理由① 収入が3〜5割下がる

やっている仕事が大きく変わらなくても、年収は定年前と比べて30%〜50%ほど下がるのが一般的です。私の場合も基本給が約40%減になりました。

頭では分かっていても、実際に明細を見ると効きます。生活水準の見直しが必要になりますし、何より「同じように働いているのに」という気持ちの整理がいちばん難しいところです。

▶ 私の実際の給料の下がり方、手当の扱い、賞与がどうなったかは再雇用のリアル 私の立ち位置は・・・で包み隠さず書いています。

理由② 立場が入れ替わる「ねじれ現象」

管理職から一般社員やアドバイザーに退くことで、かつての部下が上司になるという逆転が起きます。指導される側になるストレスもありますが、実は元部下のほうも相当気を使っています

指示を出しにくい、注意しにくい、かといって特別扱いもしづらい。お互いに遠慮し合って、妙な空気になることがあるのです。ここは年上の側から先に線を引いてあげたほうが早いと、私は思っています。

理由③ 役割があいまいで、やりがいが薄くなる

「どこまでが自分の仕事なのか」が最初はまったく分かりません。任される業務の範囲が不透明だったり、単調で責任の薄い作業が増えたりして、やりがいを見失いやすい時期です。

営業マンは半ば個人事業主のような働き方で、自分で数字を作って会社に貢献してきました。それが、会社の流れに沿って動く立場に変わるのですから、戸惑って当たり前だと思います。

理由④ 体力が現役時代のペースについてこない

60代に入ると、定年前と同じペースでフルタイム勤務を続けること自体が身体的な負担になります。何より疲れが抜けにくい。若い頃は一晩寝れば戻りましたが、今は週末を丸ごと使ってようやく戻る感じです。

理由⑤ 1年ごとの契約更新という心細さ

多くの会社で再雇用は1年ごとの有期雇用契約になります。制度上は65歳まで継続されるのが原則ですが、それでも毎年「更新」という手続きがあること自体が、じわじわと心理的な負担になります。

項目定年前再雇用後(60〜65歳)
年収基準となる金額30〜50%減
立場役職・裁量あり一般社員・補佐役/元部下が上司
役割明確(数字で評価)あいまいになりやすい
体力翌日には回復疲れが抜けにくい
雇用無期雇用1年ごとの有期契約

乗り越えるための3つのポイント

  1. 役割を切り替える……「プレイヤー」から「サポート役」へ。自分の価値の置きどころを一度、自分で決め直す
  2. 働き方を柔らかくする……体力に合わせて短時間勤務や週3〜4日勤務が選べないか、会社に確認してみる
  3. マネープランを組み直す……給付金などの制度を最大限使い、支出のバランスを60代向けに整える

▶ 収入が3〜5割下がるなら、まず手をつけるべきは固定費です。通信費は定年後におすすめの格安SIM・キャリアプラン、支払い方法の見直しは合理的クレジットカードの活用術にまとめています。

最大の落とし穴|残業すると国からの手当がカットされる

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい話です。

「残業すればするほど、国からの手当が減る」——この仕組みは、再雇用後の5年間(主に60歳〜65歳)に集中して起こる、非常に象徴的な問題です。私も再雇用になって初めて知りました。

そもそも「高年齢雇用継続給付」とは

この現象を引き起こしているのは、雇用保険から支給される「高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金)」という制度です。

ざっくり言うと、「60歳以降の給料が、60歳時点の75%未満に下がってしまった人への補填」です。60歳〜65歳は給与が急激に下がるのが一般的なので、この制度が当てはまるのは実質この期間だけということになります。

なぜ残業すると減るのか|残業代も「その月の賃金」に入る

理由は単純で、給付金の額は「その月にもらった給料」をもとに計算されるからです。そして、その給料には残業代も含まれます

残業をして給料(=計算式の分母)が増えると、「60歳時点からどれだけ下がったか」という低下率が小さくなります。すると給付金が減額される、あるいはゼロになってしまうのです。

頑張って残業したのに、その分だけ国からの手当が引かれていく。働けば働くほど報われないという、なんとも言えない構造がここにあります。

決定的な差は「税金がかかるかどうか」

そして、この期間に働く人を本当に悩ませる最大のポイントは、残業代と給付金の「税金・社会保険料の扱いの違い」です。ここを知らないと判断を間違えます。

残業代高年齢雇用継続給付
所得税・住民税かかるかからない(非課税)
社会保険料かかる対象外
手元に残る割合額面の6〜7割程度100%がそのまま手取り

つまり、残業代は額面の6〜7割しか手元に残らないのに対し、給付金は1円も引かれずに丸ごと手取りになるということです。

結果として、「必死に残業して得た残業代(手取りは微増)」よりも、「減らされた給付金(非課税)」のマイナスのほうが大きくなる場面が出てきます。疲労だけが残るという逆転現象です。

私の場合を計算してみたところ、月25時間以上残業しないと、実質の手取りは増えないという結果になりました。25時間といえば、毎日1時間以上残っている計算です。それでようやくトントン。これを知ったときは正直、力が抜けました。

【要注意】2025年4月から給付率は最大10%に縮小されました

ひとつ、これから60歳を迎える方に必ず知っておいていただきたいことがあります。

この高年齢雇用継続給付は、2025年4月から支給率が縮小されました。私が受け取り始めた頃は下がった賃金の最大15%でしたが、2025年4月1日以降に60歳になる方は最大10%になっています(そのかわり、賃金の減額に関する取り扱いも見直されています)。

金額が小さくなった分、「残業して給付金が減る」という損の度合いも以前より小さくはなりました。ただし、非課税の給付金が減って課税される残業代が増えるという構造そのものは変わっていません。「昔ほどではないが、やはり残業は割に合わない」——これが正確なところです。

ご自分がどちらの率に当たるのか、いくら支給されるのかは、勤務先の人事か、お近くのハローワークで必ず確認してください。制度は今後も見直される可能性があります。知らずに受け取っていない方も実際にいらっしゃいます。

とはいえ、自分だけ定時で帰るには勇気がいる

こうした制度があるため、再雇用後の5年間は「残業代で稼ごうとせず、定時で退社して給付金を満額もらい、体力と時間を温存する」という選択をする人が非常に多くなります。制度上は、それが最も合理的です。

しかし——これは正直に書きますが、いくら再雇用とはいえ、繁忙期に自分だけ割り切って定時で帰るのは、鋼のメンタルと勇気が要ります。周りはまだ仕事をしているわけですから。

そこで私が心がけているのは、次の3つです。

  1. まず、この仕組みを上司や同僚に伝える。「残業すると国からの手当が減るので、定時で終わるように組み立てています」と先に説明しておく。この制度、知らない人のほうが圧倒的に多いです
  2. そのうえで、効率的に仕事を片づけて定時に帰る努力をする。説明だけして仕事が終わっていないのでは、ただの言い訳になります
  3. どうしても仕事がはけない時は、残業も仕方ないと割り切る。ここは大事なところです

3つ目について補足させてください。制度を盾にして一切残業しない人になってしまうと、周りは助けてくれなくなります。そうなると、この5年間はもっと辛くなる。

数千円の給付金より、「あの人は困ったときにはちゃんとやってくれる」と思ってもらえることのほうが、はるかに価値がある——営業を35年やってきた私の実感です。そういう姿勢を見て、周りが助けてくれるようになる。そのほうが結局は得なのです。

65歳を過ぎると景色が変わる|在職老齢年金の世界へ

65歳を超えると高年齢雇用継続給付の対象外になるため、この「残業したら手当が減る」という仕組み自体がなくなります。

代わりに登場するのが「在職老齢年金」です。働きながら厚生年金を受け取る場合、給料と年金の合計が一定額を超えると年金がカットされる、という別のルールですね。

ただし結論から言うと、一般的な再雇用の給料であれば、まず該当しません。ここが60代前半とはまったく違うところです。

カットが始まる基準は「月額65万円」

在職老齢年金でカット(支給停止)が始まる基準額——正式には「支給停止調整額」といいます——は、月額65万円です。

日本年金機構の公式サイトにも、令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年(2026年)4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられたと明記されています。

年金額と給与(賞与含む)の合計がこの基準を超えなければ、年金はカットされずに全額受け取れます。

年度支給停止基準額(月額)ポイント
2024年度(令和6年度)50万円
2025年度(令和7年度)51万円
2026年度(令和8年度)〜65万円令和7年年金制度改正法により大幅引き上げ

※改正法案の段階では基準額は「62万円(2024年価格換算)」として示されていましたが、その後の賃金・物価の改定を経て、実際に適用されているのは65万円です。この基準額は今後も見直される可能性がありますので、実際に判断される際は必ず日本年金機構の公式サイトか年金事務所で最新の金額をご確認ください。

判定に使う「2つの金額」と計算式

支給停止になるかどうかは、次の2つの合計で判定します。

  1. 総報酬月額相当額……その月の給与 + 過去1年間の賞与 ÷ 12
  2. 基本月額……老齢厚生年金の月額(※老齢基礎年金は含みません)

そして、超えた場合のカット額はこうなります。

支給停止額(月額)=(総報酬月額相当額 + 基本月額 - 65万円)÷ 2

超えた分がまるごと消えるのではなく、超えた金額の半分がカットされるという点は覚えておいてください。

賞与がある人は「毎月の枠」が減ります

ここは見落としやすいところです。賞与は月割りにして、毎月の判定に組み込まれます。

たとえば賞与が年間120万円ある場合。

  • 賞与の月割り額:120万円 ÷ 12ヶ月 = 10万円/月
  • 毎月の「給与+年金」の枠:65万円 - 10万円 = 55万円/月

つまり、「毎月の給料(残業代等を含む額面)+ 老齢厚生年金」が55万円を超えなければ、年金は1円もカットされないということになります。

年間の賞与月割り額毎月の「給与+年金」の枠
なし0円65万円
60万円5万円60万円
120万円10万円55万円
180万円15万円50万円

枠を超えたらいくら減るのか(計算例)

賞与120万円の方で、毎月の給料と年金の合計が60万円(枠より5万円オーバー)になったとします。

  • 判定に使う額:毎月60万円 + 賞与の月割り10万円 = 月70万円
  • 基準オーバー分:70万円 - 65万円 = 5万円
  • 年金のカット額:5万円 ÷ 2 = 月2.5万円(年間30万円)

年間30万円は、決して小さくない金額です。賞与がある方は「毎月の額面給与+厚生年金」を枠の中に収めるという意識を持っておくと安心です。

カットされるのは「老齢厚生年金」だけ

もうひとつ大事な点です。カットの対象になるのは老齢厚生年金だけで、国民年金にあたる「老齢基礎年金」はどれだけ給料が高くても1円も減りません。ここは全額支給されます。

なぜ国は基準を50万円台から65万円へ一気に上げたのか

2024年度は50万円、2025年度は51万円だったものが、いきなり65万円です。ずいぶん思い切ったな、というのが正直な感想でした。

日本年金機構は今回の見直しの趣旨について、平均寿命・健康寿命が延びるなかで、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとするためと説明しています。

ただ、その裏側には「シニアに少しでも長く働いてもらい、社会保険料の支え手であり続けてほしい」という国の事情もあります。理由は大きく3つです。

① 労働力不足と「支え手」の確保

少子高齢化で現役世代の人口が急減するなか、60代・70代は貴重な労働力です。そして会社で働いて厚生年金に加入し続ければ、本人は保険料を納める「支え手」になります。

国からすれば、「年金をカットされたくないから」と働く時間を抑えられたり退職されたりするより、しっかり働いて保険料を納めてもらうほうが、制度の維持にとって圧倒的にプラスなのです。

② 「働くと損をする」という就業調整の解消

これまでの月50万円という基準では、少し役職に就いたり残業をしたりするとすぐに年金がカットされていました。

その結果、「頑張っても年金が減るなら、労働時間を短くしよう」「責任ある仕事は受けないでおこう」という労働意欲の低下(就業調整)を招いていたわけです。基準を65万円まで緩めることで、能力のあるシニアが遠慮せずフルに働ける環境を整えた形になります。

③ 年金財政への影響が限定的だから

基準を緩めてカットを減らせば、国が支払う年金の総額は当然増えます。しかし、制度を緩めてシニアが長く働くことで新しく納められる保険料収入が増えるため、増えた支給額の多くを相殺できるという試算が成り立っています。

一言でまとめれば、「年金をカットして抑え込むより、年金を払ってでも働いてもらい、保険料を納めてもらうほうが国全体としてプラス」という方針転換です。

国の方針は「若いうちは自助、高齢期は長く働く」へ完全に切り替わった

60代前半の「残業すると給付金が減る」問題と、65歳以降の「在職老齢年金の大幅緩和」。この2つを並べてみると、国の狙いがはっきり見えてきます。

65歳までは給付金等で急激な収入低下を支えつつ、65歳以降はできるだけ制限なく長く働いてもらう——そういう方向に、制度が明確にシフトしているのです。

この背景にあるのが、「全世代型社会保障」と呼ばれる構造改革です。かつての「若者が高齢者を支える」という胴上げ型の前提が成り立たなくなり、役割分担が作り直されています。

国の狙い具体策
若者・現役世代公的年金だけに頼らず、自分で老後資金を作ってほしいNISA・iDeCoの拡充(税制優遇の大幅拡大)
シニア世代「支えられる側」から「一緒に支える側」へ回ってほしい65歳以上の雇用確保、在職老齢年金の基準緩和、厚生年金の加入対象拡大

一昔前の「現役時代に保険料を納め、60歳で退職して、あとは年金で暮らす」というモデルは、もう完全に終わりました。今は「若者は自助で資産を作り、高齢者も元気なうちは保険料を払いながら長く働く」という仕組みに切り替わっています。

いいか悪いかは別として、そういうルールで動いている以上、こちらもルールを知ったうえで動いたほうがいい——私はそう考えています。

長く働くことのメリットとデメリット

では、長く働くことは実際どうなのか。良い面も悪い面も、正直に並べます。

メリットデメリット・リスク
老後資金の取り崩しを先送りできる持病の悪化・怪我のリスクが高まる
厚生年金に入り続けると、将来の年金額(報酬比例部分)が増える趣味・旅行・家族との時間が減る。健康寿命には限りがある
体を動かし頭を使うことが、体力低下や認知機能の低下の予防になる社会保険料・住民税・所得税を納め続けることになる
人との交流が保たれ、退職後に陥りがちな孤立感を防げる役割の変化や若い世代との人間関係でストレスを感じる
生活費を賄えている間、年金の受給開始を遅らせる(繰下げ受給)選択肢が持てる

繰下げ受給について補足すると、1ヶ月遅らせるごとに0.7%、最大で84%まで年金額を増やすことができます(75歳まで繰下げた場合)。数字だけ見ればかなり魅力的です。

後悔しないためのポイントは、60代半ば以降は「現役時代と同じ働き方」から「ワークライフバランス重視の働き方」へシフトしていくことだと思います。収入・健康・自由な時間の3つのバランスを、自分でコントロールする。ここが肝心です。

「元気なうちに年金をもらいながら働く」は理にかなっている

ここまで書いてきて、私が今いちばん現実的だと思っているのが、「体と頭が元気に動くうちに、在職老齢年金をもらいながら働く」という選択です。単なる損得だけでなく、人生の満足度やリスク管理の面から見ても、理にかなっていると思います。

理由① 健康寿命の間に使えるお金が増える

ここで、この記事でいちばん見ていただきたい数字をお見せします。

健康寿命とは、心身ともに自立して健康に生活できる期間のことです。2022年(令和4年)の数字は男性72.57歳・女性75.45歳。同じ年の平均寿命は男性81.05歳・女性87.09歳でした。

健康寿命(2022年)平均寿命(2022年)
男性72.57歳81.05歳約8.5年
女性75.45歳87.09歳約11.6年

※健康寿命の数値は公益財団法人 生命保険文化センターの資料によります。なお、厚生労働省が2026年7月に発表した令和7年簡易生命表では、2025年の平均寿命は男性81.35歳・女性87.33歳とさらに延びています。

つまり、人生の最後の男性で約8年半、女性で約12年は、何らかの介助や支援が必要になる期間だということです。厳しい数字ですが、目をそらさずに見ておいたほうがいいと思います。

年金を繰り下げて70歳や75歳から受け取り、金額を増やしたとしても、その頃には体力や気力が落ちて、旅行も趣味も楽しめない可能性があるのです。それなら、元気に動ける60代〜70代前半に給与+年金で豊かな時間を過ごすほうが、結果的に満足度は高くなるのではないでしょうか。

理由② 「早死にリスク」への最大の防衛になる

繰下げ受給の最大のデメリットは、もし70歳前後で亡くなったり大きな病気で倒れたりした場合、本来もらえたはずの年金を受け取れずに終わってしまうことです。

元気なうちから受け取っておけば、このリスクは確実に回避できます。「長生きに備える」のが繰下げ、「今を確保する」のが早めの受給。どちらを取るかという話です。

理由③ もらいながら、将来の年金も増やせる(在職定時改定)

65歳以降も厚生年金に加入して働けば、納めた保険料が毎年9月に再計算され、10月分からの年金に上乗せされます。これを「在職定時改定」といいます。退職を待たずに、働いている限り毎年少しずつベースが上がっていく仕組みです。

ただし、増える額は正直に言ってわずかです。目安はこのくらいです。

給与(月額+賞与の月割り)1年働いた場合の増額(年額)1ヶ月あたり
月20万円約1.3万円/年約1,100円
月30万円約2.0万円/年約1,600円
月40万円約2.6万円/年約2,200円

※「平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1000 × 加入月数」で試算した概算です。

1年頑張って働いても、翌年増えるのは月額1,000〜2,000円程度。「たったこれだけ?」と感じるのが普通だと思います。私も最初はそう思いました。

でも、わずかでも馬鹿にできない理由

この増額分は一括のボーナスではなく、死ぬまで毎年の年金に上乗せされ続けます。ここが大きい。

たとえば65歳から70歳までの5年間、月20万円で働いた場合。年額でおよそ6.5万円の増額になります。これを85歳までの20年間受け取るとすれば、累計で約130万円。こう考えると、決して小さな額ではありません。

増え方性格
繰下げ受給1年遅らせるごとに+8.4%インパクト大。ただし、もらえない期間がある
在職定時改定1年働いて数%程度インパクト小。ただし、もらいながら増える

伸び率だけを見れば繰下げ受給が圧倒的です。しかし、「体が元気なうちに現金を確実にもらいながら、少しずつベースも上げていく」という確実性を取るなら、在職定時改定のわずかな増額でも十分に恩恵はあると私は考えています。

▶ 再雇用を終えて退職した先輩が「時間を持て余して自己肯定感がなくなった」と話してくれた実話は、定年後いつまで働くか?再雇用の先輩に学ぶに書いています。お金だけの話ではないと痛感した出来事でした。

60〜65歳の答えは「残業」ではなく「副業」

さて、ここからが私なりの解決策です。

60歳〜65歳の期間、本業で残業しても給付金が減って報われない。では、どうすればいいのか。答えははっきりしています。

副業で得た収入は、原則として高年齢雇用継続給付の計算に含まれません。つまり、いくら稼いでも給付金はカットされないのです。

なぜカットの対象にならないのか

この給付金は、「雇用保険を納めている本業の会社から支払われる賃金」をもとに計算されるからです。ですから、次のような収入は計算の対象外になります。

  • 個人事業・フリーランスとしての副業収入(事業所得・雑所得など)
  • 株や不動産投資による収入(配当・譲渡益・不動産所得)
  • 雇用保険に加入していないアルバイト・パート収入

本業の給料が下がって給付金を受け取っている状態で、裏で個人事業をいくら頑張っても、本業の雇用保険上の賃金が増えるわけではないので、給付金は減らないというわけです。

唯一の例外|副業先でも雇用保険に入る場合

注意が必要なのは、副業先でも雇用保険に加入するケースです。

基本的に雇用保険は1人につき1社でしか加入できません。ただし2022年1月以降、「65歳以上の労働者」に限り、2つの会社で短時間ずつ働く場合に一定の条件を満たすと「マルチジョブホルダー制度」で例外的に二重加入できる場合があります。

もしこの制度を使って副業先でも雇用保険に加入した場合は、2社分の合算賃金で判定される可能性がありますので、ハローワークへの確認が必要です。

ただし60歳〜64歳の通常の副業であれば、雇用保険は1社でしか入れませんので、本業以外の収入が合算されることはありません。

収入の種類給付金への影響
本業での残業・給与アップカット・減額される
個人事業・業務委託などの副業収入一切影響しない
株・不動産などの投資収入一切影響しない

したがって、「本業の給料が下がって給付金をもらいつつ、さらに収入を増やしたい」という場合、本業で残業をするより、個人で受託する副業などで稼ぐほうが、制度上かなり効率的ということになります。

確定申告は「所得」が20万円を超えたら

副業をするなら、税金の話も押さえておきましょう。

副業の所得(利益)が20万円を超える場合は、原則として所得税の確定申告が必要です。ここで最も大事なのは、この20万円が「売上」ではなく「売上から必要経費を引いた利益」で判断されるという点です。

売上必要経費所得(利益)確定申告
30万円15万円15万円不要
50万円15万円35万円必要

年金受給者(60代以降)の場合は、国の「確定申告不要制度」により、公的年金の収入が年間400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則不要です。しかし副業の所得が20万円を超えると、この制度の対象外となり申告が必要になります。

そして見落としがちなのが住民税です。所得税の確定申告が「20万円以下だから不要」となる場合でも、お住まいの市区町村への住民税の申告は、金額にかかわらず原則として必要になります。ここは自治体の窓口で一度確認しておくと安心です。

副業をされる際は、売上だけでなく「何が経費にできるか」の領収書やレシートをしっかり保管しておいてください。これだけで手元に残る額が変わります。

フリーランス収入なら、65歳以降も年金はカットされない

そして、これが副業を勧める一番の理由かもしれません。

完全なフリーランス(個人事業主)としての収入であれば、いくら稼いでも年金がカットされることは一切ありません。「いくらから止まるのか」を心配する必要すらないのです。

理由は、在職老齢年金の仕組みが「厚生年金に加入して働いている人(会社員や役員)」だけを対象にしているからです。

年金カットの有無
会社員(厚生年金に加入)給与+年金が月65万円を超えると一部カット
フリーランス(個人事業主)対象外。売上や利益がいくらでもカットなし

ただし、年金以外への影響はあります

いいことばかりではありません。年金はカットされませんが、フリーランスの収入が増えると次の点に影響が出ます。ここは正直にお伝えしておきます。

  1. 税金(所得税・住民税)が増える……年金収入(雑所得)と事業所得を合算して計算するため、税率が上がります
  2. 国民健康保険料が高くなる……前年の所得をもとに計算されるので、稼いだ翌年の保険料が上がります
  3. 家族の社会保険の扶養から外れることがある……ご家族の健康保険の扶養に入っている場合、年金+事業収入の合計が年間180万円(60歳以上の場合)を超えると扶養から外れ、自分で保険料を払うことになります

とはいえ、「年金のカット枠を気にせず、自分のペースで事業収入を伸ばせる」というのは、この年代にとって非常に大きな自由だと思います。

▶ 私が「もっと早くやっておけばよかった」と後悔していることは再雇用前にやっておけばよかった3つのことにまとめました。パソコン・IT に向き合うのが遅すぎた、というのが最大の後悔です。

まとめ|収入が減った分、時間が手に入っている

長くなりましたので、60〜65歳と65歳以降で何がどう違うのかを、最後に整理しておきます。

60歳〜65歳65歳以降
関係する制度高年齢雇用継続給付在職老齢年金
残業の扱い残業すると給付金が減る月65万円の枠内なら影響なし
税金給付金は非課税・社会保険料の対象外年金は雑所得として課税
副業収入影響なしフリーランス収入なら影響なし
働き方の答え定時で帰り、時間を別のことに使う枠内で堂々と働く

60歳〜65歳の再雇用期間は、高年齢雇用継続給付の仕組みにより、会社での残業は収入面で不利になります。ここは、どうにもなりません。

しかし——見方を変えてください。収入が減った分、自分の時間が取りやすくなっているのです。定時で帰れる。休日も確保できる。現役時代には絶対に手に入らなかったものです。

この利点を活かして副業に取り組めば、時間はたっぷりありますから、いろいろと挑戦できます。もし副業がうまく軌道に乗れば、65歳からの年金カットを考えなくても済みます。

そして仮に、65歳の時点でうまくいっていなかったとしても——その挑戦は、間違いなくあなたのスキルアップにつながっているはずです。私自身、63歳でこうしてブログと格闘していますが、現役時代の自分が見たら驚くようなことを毎日やっています。最初の数ヶ月は本当に苦痛でしたが、今は少し楽しくなってきました。

今の中途半端に感じる働き方も、「制度が用意してくれた助走期間」だと思えば、悪くないのかもしれません。

定年後は、意外と長い。お互い頑張っていきましょう。

※本記事の制度の内容は執筆時点のものです。給付金の支給率や在職老齢年金の基準額は法改正や毎年度の見直しで変わりますので、実際のご判断の前に、ハローワーク・年金事務所・日本年金機構の公式サイトで必ず最新の情報をご確認ください。税金や確定申告についても、詳しくは税務署または税理士にご相談ください。


この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

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