ディーラーの中古車営業のリアル|ノルマ・粗利・向いている人を現役営業マンに聞いた|専業店との違いも正直に

ディーラー裏話
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皆さんこんにちは。元カーディーラー営業マンです。皆さんは「中古車営業マン」に対して、どのようなイメージを抱かれていますか。ノルマや職場環境の実態は、新車営業ほどには知られていないと思います。2023年の大手中古車販売店の不正問題で「中古車販売=過酷なノルマ」という印象が広まり、「厳しい」というイメージが先行していますが、実態はどうなのでしょうか。

先に、私の立場をはっきりさせておきます。私は35年間、新車営業でした。この記事は、同じ店舗で隣の中古車部門を見続けてきた立場と、現役の中古車営業マンに直接聞いた話をもとに書いています。「私が見てきたこと」と「Aさんに聞いたこと」は分けて書きますので、どちらの話かを意識しながら読んでください。

そしてもう一つ。この記事で書くのは「カーディーラー(新車販売店)の中にある中古車営業」の話です。テレビで問題になったような中古車専業店の現場は、私は中にいたことがないので語れません。ただ、両方を知る人の話は聞けましたので、その違いも後半で正直に書きます。

「中古車営業=厳しい」というイメージは、どこから来たのか

2023年、大手中古車販売店の一連の不正が明るみに出ました。過剰な販売・買取のノルマ、達成できない社員への降格や叱責、保険金の水増し請求。連日の報道で、「中古車営業=悪質なノルマと体育会系の社風」というイメージが決定づけられました。

この影響は、業界全体に及びました。求職者の間には「顧客をだますような仕事をさせられるのではないか」という警戒感が生まれ、店頭に立つ営業マンは、最初からお客様に疑いの目で見られるようになった。そういう時期が確かにありました。

ただ、ここで一つ整理しておきたいことがあります。「中古車営業」とひとくくりにされている職場には、まったく別の2つの世界があるということです。

  • 中古車専業店:全国チェーンのメガ店から地域の販売店まで。オークションなどで仕入れた多メーカーの車を販売する。給与は「低めの基本給+高い歩合」の型が多い
  • カーディーラーの中古車部門:新車販売店が運営する中古車センター。自社の下取り車・試乗車上がりを中心に、認定中古車として販売する。給与は基本給と賞与の比率が高い

報道で問題になったのは前者です。そしてこの記事で書くのは後者です。同じ「中古車営業」という言葉で語られますが、仕事の中身も、職場の空気も、かなり違います。

現役の中古車営業マンAさんに、5つ聞いてみた

私が勤めていた販売会社の中古車部門で、現役で働くAさんに、読者の皆さんが一番知りたいであろう5つのことを直接聞きました。以下はAさんの話です。

①ノルマは「台数」で見られるのか、「粗利」で見られるのか

Aさんの答えは明快でした。「基本的に粗利金額が優先。ただし、月に数台という最低ラインの台数は必要」。

ここが新車営業との大きな違いです。新車営業は「今月何台」という台数の計画が前面に出ます(新車の計画台数の決まり方はカーディーラー営業マンのノルマ事情で詳しく書きました)。中古車営業は、1台ごとの利益がまちまちなので、「いくら利益を出したか」で評価される。台数は最低限をクリアしていればいい、という考え方です。

ボディコーティングや用品の追加販売については「ノルマはない。ただ粗利につながるので、勧めない理由がない」とのこと。自動車保険やJAFの獲得は目標として設定されていて、取れればインセンティブ(報奨金)になります。これは新車営業と同じ構造です。

②「中古車営業は厳しい」と言われるが、本当に厳しいのはどこか

Aさんが挙げたのは、ノルマの数字ではなく「スピード」でした。

中古車は「現車販売」です。展示してあるその1台を売る商売なので、その場で成約できなければ、次はない。お客様が「考えます」と帰ったあとに、その車が別のお客様に売れてしまうことは日常です。新車なら「じゃあ来週もう一度」が成り立ちますが、中古車では成り立たない。

だから中古車営業には、展示車両1台1台の特徴を頭に入れておき、お客様の要望を聞いた瞬間に「それならこの車です」と即座に提案できる力が要ります。Aさんいわく「ある意味、新車営業よりもスピードとフットワークの軽さが必要」。厳しさの正体は、理不尽なノルマではなく、この「一発勝負」の連続にあります。

③新車が減って、新車営業マンまで中古車を売るようになり、現場はどう変わったか

ここは背景から説明します。新車の販売台数は、コロナ前と比べて確実に減りました。全国の新車販売台数(登録車+軽自動車)は、2019年の約519万台から2025年は約457万台へ、およそ12%の減少です。私が勤めていた販売会社では、体感としてはもっと大きく、コロナ前比で約2割減でした。

新車が売れなければ、店の粗利が足りない。そこで新車営業マンも、粗利を確保するために進んで中古車を売るようになりました。私が現役の終わりごろに見た、はっきりした変化です。

この変化を、中古車営業のAさんはどう見ているか。「売りやすい車は新車営業との取り合いになるので、以前よりはやりにくい」。状態の良い高年式の人気車は、新車営業も狙ってくる。一方で「中古車営業が新車を売ることもあるが、もともと中古車から始まっているので、新車営業への影響はない」とのこと。つまり、しわ寄せは中古車営業の側に来ている、というのが現場の実感です。

④向いている人、続かない人の違い

Aさんの答えは、意外なほど地味でした。「コツコツ努力するタイプ」。

具体的には、展示車両の状態・台数・入荷予定を常に把握している人。お客様の動向をよく見ている人。そして、来店客や電話に「スッ」とすぐ動ける人。②で書いた「一発勝負」に勝つには、才能よりも、日々の準備と初動の速さが効くということです。続かないのは、その逆のタイプ。展示車を把握せず、お客様が来ても動きが遅い人です。

私が隣で見ていた印象も同じです。中古車センターで長く続いている人は、派手な口上を言う人ではなく、朝一番に展示場を一周して車の状態を見ている人でした。

⑤専業店から転職してきた人は、ディーラーとの違いをどう言っているか

Aさんの周りには、中古車専業店からディーラーに移ってきた人もいます。その人たちが口をそろえて言う違いは、「ディーラーの中古車営業は、新車販売の中の中古車販売だ」ということ。

どういうことか。ディーラーでは、新車を売る → そのお客様の下取り車が入る → その下取り車を中古車として売る → 中古車を買ったお客様が次は新車を買う、という循環があります。だから中古車営業の仕事は「1台売って終わり」ではなく、ディーラーとしてお客様を守り、増やしていくことの一部です。専業店の「仕入れて、売って、次」という商売とは、根本の考え方が違う。ここが一番の違いだ、と転職組は言うそうです。

私が隣で見てきた、ディーラー中古車営業の「有利な条件」

ここからは私自身の観察です。新車営業として35年、隣の中古車部門を見続けてきて、「正直、うらやましい」と思っていた点がいくつかあります。

仕入れ単価が低いから、粗利が取りやすい

ディーラーの中古車センターに並んでいる車は、試乗車上がりやレンタカー上がりの高年式車が多い。これらは社内で経費として償却してきた車なので、オークションで仕入れた車より仕入れ単価が低い。稀に入る高年式の下取り車も同じで、市場で買ってくるより安く手に入ります(試乗車上がりの仕組みは新古車・試乗車上がりは本当にお得なのかで詳しく書いています)。

その結果どうなるか。中古車営業マンの年間の総粗利金額が、新車営業マンの倍以上になるのは珍しい話ではありません。新車は値引き競争で粗利が薄く、中古車は仕入れが安いぶん1台の粗利が厚い。粗利で評価される仕事で、粗利が取りやすい商品を扱えるというのは、営業マンにとって大きな有利です。

同じメーカーの車ばかりだから、在庫を把握しやすい

専業店の展示場には、いろいろなメーカーの車が並びます。ディーラーの中古車センターは、ほぼ自社メーカーの車。②で「展示車両の特徴を頭に入れておく」ことが勝負を決めると書きましたが、覚えるべき車種が絞られているぶん、新人でも把握が早い。これは小さくない差です。

お客様が「向こうから来る」ルートが複数ある

Aさんによれば、新人のうちは、来店客・電話のお客様・ネットからの問い合わせを、先輩が優先的に回してくれるそうです。それに加えてディーラーならではのルートがあります。

  • 新車の商談から「予算的に中古車で」と流れてくるお客様
  • 自社の中古車センターのホームページを見て来るお客様
  • 既存の全ユーザーに出すA4サイズのDMを見て来るお客様
  • 経験を重ねると、既存ユーザーの乗り換え・増車・紹介

ベテランになると、既存ユーザーの乗り換え・増車・紹介がメインになるとのこと。飛び込みや強引な電話営業をする必要が、ほとんどないのです。

「ディーラー保証」と「整備工場」という、売る側の安心感

お客様にとって、ディーラー保証のある車を、ディーラーの整備工場がある店で買える安心感は大きい。これは売る側にとっても同じで、「この車、大丈夫ですか」と聞かれたときに、自信を持って答えられる。下取りで入ってきた車の状態は、査定の段階で細かく見ています(下取り価格の謎|ディーラー査定の仕組み)。車体トラブルによる激しいクレームが起きにくいのは、営業マンの精神的な負担を大きく減らします。

正直に書く、ディーラー中古車営業の「良くない点」

ここまで良い話ばかりなので、正直に反対側も書きます。

  • 目標(ノルマ)は当然あります。怒号や理不尽な詰めは少ないですが、粗利・台数・保険・車検入庫の目標数字は設定されます。「ノルマがない職場」ではありません。
  • 土日祝は出勤が基本。店舗の定休日(火・水など)は休めますが、世間と休みは合いません。休みの日にお客様から電話が入ることもあります。
  • 一攫千金は狙えません。専業店のように歩合が跳ね上がる制度ではないので、「20代で年収1,000万円」のような稼ぎ方をしたい人には物足りない。基本給+インセンティブで安定して稼ぐ型です。
  • 売りやすい車の取り合いが起きています。③で書いたとおり、新車営業も中古車を売る時代になり、以前より「やりにくい」のが現場の実感です。
  • 「個人」より「店全体」で見られる傾向が強い。店全体の粗利として考える文化なので、自分一人の数字で突出したい人には合わないかもしれません。

専業店とディーラー、どちらを選ぶべきか

私は専業店の中にいたことがないので、優劣は言えません。ただ、Aさんの話と、業界で一般的に言われている違いを、「向き・不向き」で整理するとこうなります。

カーディーラーの中古車営業中古車専業店
扱う車自社メーカー中心。下取り車・試乗車上がりの認定中古車多メーカー。オークション等で仕入れ
評価の軸粗利優先+最低限の台数。店全体で見る傾向台数・粗利とも個人の数字が前面に出やすい
給与の型基本給・賞与の比率が高い。安定型基本給低め+歩合高め。実力次第で大きく稼げる
お客様の来方新車の流れ・自社顧客・DM・紹介集客は店と個人の力次第
向いている人安定と長期のキャリア。守られた環境で基礎を身につけたいプレッシャーに強く、若いうちから実力で稼ぎたい

なお、2023年の問題以降、専業店の側でも法令順守の徹底や評価制度の見直しが進んでいます。「専業店=全部ブラック」と決めつけるのも、実態とは違うと思います。会社によって差が大きい世界なので、応募する前に、その会社の給与の型(基本給と歩合の比率)と休日の実態を必ず確認してください。

営業マンを始めるなら、ディーラーの中古車営業は「かなり守られた入口」です

これが、35年間隣で見てきた私の結論です。理由を3つにまとめます。

  • 未経験者のハードルが、新車営業より低い。新車営業は新卒中心で中途の門が狭いのに対し、中古車部門は経験を問わない募集が多い。
  • 自動車販売の基礎を学ぶには、勝負が早い中古車のほうが向いている。Aさんも「販売の基礎を勉強するには、新車営業よりも中古車営業をお勧めする」と言っていました。1回の商談で決めきる経験を、短期間に何度も積めます。
  • 福利厚生と法令順守で守られていて、粗利率が高いので稼ぎも新車営業より有利になりやすい。休日や有給の取りやすさは、専業店と比べて明らかです。

実際、私の周りでは中古車営業から始めて、新車営業になった人も少なくありません。中古車で「一発で決める力」を身につけた人は、新車に移っても強い。逆はあまり聞きません。

まとめ|「中古車営業=厳しい」は、半分正しくて、半分違う

「中古車営業は厳しい」というイメージは、専業店の一部の問題が業界全体に広がったものです。ディーラーの中古車営業に限って言えば、厳しさの正体は理不尽なノルマではなく、「その場で決めなければ次がない」というスピード勝負にあります。そしてそれは、コツコツ準備して、すぐ動ける人なら、十分に戦える厳しさです。

  • 評価は台数より粗利。最低限の台数はある
  • 厳しいのはスピード。展示車の把握と初動の速さが勝負
  • 新車が減った今、新車営業との取り合いで以前よりやりにくい面はある
  • 仕入れが安く粗利が厚いので、稼ぎは新車営業より有利になりやすい
  • 守られた環境で営業の基礎を学ぶ入口としてお勧め。ただし土日出勤と一攫千金なしは覚悟を

新車営業と中古車営業の売り方の違いをもっと知りたい方は、新車営業と中古車営業は何が違う?もあわせてご覧ください。この記事が、中古車営業という仕事を考えている方の、判断の材料になれば嬉しいです。


この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

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