試乗車の正しい乗り方を元カーディーラー営業マンが解説|高速道路も自宅の車庫入れも頼めばできる

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「試乗したけど、緊張してよく分からなかった」
「同乗した営業マンのトークが気になって、運転に集中できなかった」
「試乗して買ったけど、自宅の車庫が思ったより狭かった」

こんにちは。元カーディーラー営業マンです。カーディーラーの試乗にまつわるこんな話、よく耳にします。一般的な試乗の時間は一人15分前後。数百万円の高額商品のわりには、非常に短いと思いませんか?

実は営業マン自身も、新型の試乗車にナンバープレートが付いたら必ず試乗します。夜間の混雑していない時間帯に試乗コースを2〜3周、車種によっては高速道路まで走ります。車は見た目やスペックも大切ですが、それ以上に、実際に乗ってみないと分からないことだらけだからです。今回は35年以上の現場経験から、「試乗車の正しい乗り方」を解説します。

試乗に行く前の準備

  • 事前予約は必須:希望の車種・グレード(ガソリン車かハイブリッド車かなど)の試乗車が常に店舗にあるとは限りません。他のお客様が試乗中のこともあるため、WEBか電話での事前予約が確実です
  • 服装と靴に気をつける:サンダルやハイヒール、厚底の靴は運転操作に支障が出ます。普段の運転で履き慣れた靴で行きましょう
  • 持ち物の確認:運転免許証は絶対に忘れずに。また、普段使っているチャイルドシートや、よく載せる大きめの荷物(ベビーカーやゴルフバッグなど)があれば持参するのがおすすめです。実際に積めるか試させてもらえます

乗り込んだら、走り出す前にチェックすること

車に乗り込む前と、シートに座った瞬間の感覚も大切な判断材料です。

  • 乗降性と居住性:乗り降りのしやすさ、頭上や足元の窮屈感。運転席だけでなく、後部座席の座り心地も必ず確認を
  • 視界と運転姿勢:前方・後方・斜め後ろの死角が少ないか。メーターやナビの見やすさ、スイッチ類の操作のしやすさ
  • 荷室(トランク):開口部の高さ、シートを倒したときのフラットさなど、荷物の出し入れがスムーズにできそうか

プロ直伝|出発前に「正しいドライビングポジション」を作る

試乗前に、必ずご自身のドライビングポジションを決めてください。手順はこうです。

  • 右足でブレーキを強く踏んでも余裕がある着座位置にシートを合わせる
  • 左足はフットレストを踏ん張れる位置に
  • ハンドルは右手2時・左手10時の位置で握って、肘に余裕がある状態に。背中はシートにピッタリつける

この体勢なら、もし事故に遭っても両手・両足・背中で踏ん張れます。シートベルトを締めて、ルームミラーとドアミラーを調整・確認してから、いざ出発です。ポジションがきちんと決まると、車の大きさの感覚も乗り心地の評価も正確になります。緊張して「よく分からなかった」となる人の多くは、実はこの最初の1分を飛ばしているんです。

試乗中にチェックすべき4つのポイント

  • ①発進時と静粛性(スタート直後):エンジンやシステムをかけたとき、アイドリング時の音・振動が気にならないか。ハイブリッド車やEVは、モーターからエンジンに切り替わる瞬間の違和感もチェック
  • ②加速とブレーキ(直進・合流時):アクセルを踏み込んだときの加速がスムーズか、上り坂でパワー不足を感じないか。ブレーキは「カックン」とならず、狙い通りに止まれるか
  • ③乗り心地とハンドリング(カーブや段差):カーブでの車体の傾き(ロール)、段差を乗り越えたときの突き上げ感と揺れの収まり具合。「硬め」「柔らかめ」が自分の好みに合うかがポイント
  • ④小回り・駐車のしやすさ(試乗の終盤):店舗に戻ったら、バック駐車や車庫入れを試させてもらいましょう。最小回転半径の感覚や、バックカメラ・アラウンドビューモニターの見やすさを確認する絶好のチャンスです

営業マンのトークが気になって集中できないときは、「少し運転に集中しますね」と伝えてOKです。失礼でも何でもありません。むしろ真剣に検討しているサインとして、営業マンは好意的に受け取ります。普段よく通る狭い路地や坂道に似たルートを走れないか、相談してみるのも手です。

高速道路も自宅の車庫入れも、頼めばできる

意外と知られていませんが、高速道路の試乗も、自宅での車庫入れテストも、事前に相談すればできるケースが非常に多いです。どちらも「実際に使えるか」を判断する最重要ポイントなので、ディーラー側も「購入に前向きなお客様」として喜んで協力してくれることがほとんどです。

自宅の車庫に入れてみる

「カタログ上のサイズはクリアしているのに、いざ入れたらドアが開けられない」「アプローチの段差で車の下を擦りそう」——こうした後悔を防ぐため、車庫入れテストは強くおすすめします。商談がある程度進んだ段階で、「購入を前向きに考えているが、自宅の車庫に入るかだけが心配」と伝えれば、まず快諾してもらえます。自宅がディーラーから車で片道10〜15分程度なら、営業マンが同乗して試乗ルートの延長として走らせてくれます。遠い場合は、1日貸し出し(1Dayモニターキャンペーンなど)がないか相談してみましょう。

高速道路を走ってみる

「合流時の加速感」「高速域での静粛性やロードノイズ」「ACC(追従クルーズコントロール)などの運転支援機能の使い心地」は、一般道では体感できません。ポイントは3つです。

  • 予約時にあらかじめ伝える:通常の試乗枠は15〜20分。高速試乗には1時間以上必要なので、「高速を試したいので長めの枠を確保できますか?」と事前相談が必須です。飛び込みではほぼ不可能です
  • 高速料金は自分で負担する:往復の通行料金はユーザー側が負担するのがマナー。自分のETCカードを持参しましょう
  • 営業マンが同乗します:基本的に営業担当者が助手席か後部座席に同乗しての試乗になります

「ずうずうしい客だと思われないかな?」と遠慮する必要はありません。営業マンですら、高速道路で最新の運転支援機能をテストしているんですから。運転支援機能の基礎知識は安全運転支援システムって何?で解説しています。

全幅が自分の生活に収まるかどうかは、カタログの数字より実際に走らせてみるのが確実です。5ナンバー・3ナンバーの違いと全幅の目安は5ナンバーと3ナンバー違いは何?メリット、デメリットは?をご覧ください。

試乗中の事故と保険|誓約書は必ず読む

万が一、試乗中に事故を起こした場合、基本的にはディーラーが加入している保険が適用されます。ただし、状況や過失の程度によっては自己負担(免責金など)が発生するケースもあります。試乗前に書く誓約書・同意書の内容には必ず目を通してください。

そして意外に知られていないのが、試乗中の事故で自分の自動車保険を使う(使うよう求められる)ケースが実際にあることです。ディーラーの保険は免責金額が高額に設定されていることがあり、誓約書に「事故の際は運転者自身の保険(他車運転特約)を優先して使用します」という条項が含まれていることが珍しくありません。

自分の保険(他車運転特約)を使う場合の落とし穴は3つあります。

  • 自分の契約内容以上の補償は出ない:他車運転特約は「自分の保険の内容」をスライドして適用する仕組み。自分が車両保険に入っていなければ、試乗車そのものの修理代は補償されません
  • 翌年からの保険料が上がる:自分の車での事故と同じ扱いになるため、使うと等級が下がります
  • 「運転者限定特約」の縛りを受ける:本人限定・夫婦限定などが付いていると、限定外の人(同乗した家族など)が運転中に起こした事故には使えません

対策はシンプルです。試乗の受付時に「万が一の事故の際、こちらの保険は使えますか?自己負担はありますか?」と営業マンに直接確認すること。そして事前に、ご自身の保険に他車運転特約と車両保険が付いているか確認しておくことです。詳しくは試乗車・代車・他人の車で事故を起こしたらどうなる?で解説しています。

【裏話】試乗中、隣の営業マンは何を考えているのか

ではここで問題です。試乗中、隣に座っている営業マンは何を考えているのでしょうか?無言で座っているように見えても、プロの頭の中では常に4つのことが回っています。

①「この車は、この人のライフスタイルに本当に合うか?」

運転している姿や車内での反応を観察しながら、事前に聞いた希望と実際のギャップを探っています。「ファミリーカー希望と言っていたけど、サイズ感に不安はなさそうか」「同乗のご家族は乗り心地をどう感じているか」。試乗はお客様の潜在的なこだわりや不満が一番出やすい瞬間なので、そこを見極めて、試乗後にどんな提案をすべきか考えています。

②「どこで、どの機能を体感してもらうか?」

「もうすぐ上り坂だから、スポーツモードで加速の力強さを体感してもらおう」「赤信号で止まったら、オートブレーキホールドの便利さを説明しよう」——走行状況に合わせて、その車の一番響くアピールポイントを出すタイミングを計っています。いわば試乗の「演出プラン」です。

③「運転のクセや、車への慣れ具合はどうか?」

営業マンにとって試乗の最優先ミッションは「安全に店舗に戻ること」です。ペダル操作のスムーズさ、車幅の掴み具合、死角の確認をさりげなくチェックし、「少し不慣れで怖がっているな」と感じたらルートを短縮したり、広い道へ誘導したり、事故を防ぐサポートに徹します。

④「購入の熱量はどれくらいか?」

ビジネスである以上、質問の細かさや車を褒めるポイントから、「趣味の試乗か、真剣な検討か」の温度感も測っています。試乗後にどこまで踏み込んだ見積もりを出すべきか、頭の中でシミュレーションしているのです。営業マンがどうやってお客様のニーズを掴む訓練をしているかは営業マンのロールプレイング研修はなぜするのか?で書いています。

つまり営業マンは、あなたの「本音」を知りたがっています。だから「思ったよりエンジン音が大きい」「ブレーキが効きすぎる気がする」など、気になったことは感じたまま口に出すのがベスト。そのほうが「では、こちらの静粛性の高いモデルはどうですか?」と、あなたに本当に合う提案が返ってきます。

実例|「乗り心地」が本当のニーズだったKさんの話

分かりやすい実例をひとつ。初老の男性Kさんが新規で来店され、「今乗っているドイツ車のセダンは足回りが硬くて乗り心地が悪い。国産車に乗り換えたい」というご相談でした。奥さんとの2人暮らしで、あまり大きなサイズは必要ないとのこと。

展示車両をいろいろご覧いただき、出たばかりのコンパクトSUVを気に入られました。コンパクトSUVといっても車幅は3ナンバーの堂々としたサイズです。試乗コースを走り、「次は高速道路を試乗したい」とのリクエスト。その日は平日で時間に余裕があり、試乗車の次の予約もなかったので、高速道路まで試乗に行きました。

ところが、試乗から帰ってきたKさんの顔色は優れません。察しの良い方はお分かりだと思いますが、コンパクトSUVはショートホイールベースに大径タイヤ。同クラスのセダンより乗り心地は良くないのです。そこで私は、同じ排気量で全長が約30cm長いセダンの試乗をお勧めしました。試乗コースと高速道路を走っていただき、Kさんは無事、そのセダンで契約してくださいました。

Kさんの一番のニーズはデザインではなく「乗り心地」でした。もし15分の試乗だけで最初のSUVを買っていたら、きっと後悔されていたはずです。しっかり試乗したからこそ、本当のニーズに合う車にたどり着けた——試乗の大切さがよく分かる事例だと思います。

まとめ|遠慮は不要。納得いくまで乗ってください

  • 試乗は事前予約で。履き慣れた靴と免許証、普段載せる荷物を持って
  • 走り出す前にドライビングポジションをきちんと作る
  • 発進・加速とブレーキ・乗り心地・駐車のしやすさの4点をチェック
  • 高速道路も自宅の車庫入れも、事前に相談すればできることが多い
  • 誓約書の保険の項目は必ず読み、気になることは営業マンに直接確認
  • 気になった点は遠慮なく口に出す。それが一番良い提案につながる

試乗するときは遠慮せず、2〜3回乗る、高速道路を走る、自宅の車庫に入れてみる、そしてご家族で乗ってみることも大事です。車は高額な買い物ですから、納得して買っていただけるように営業マンは寄り添います。ちなみに、役目を終えた試乗車がその後どう売られるのかは新古車・試乗車上がりは本当にお得なのか?で告白しています。こちらもぜひどうぞ。

▶「楽天カード・楽天ETCカードについてはこちらの記事で詳しく解説しています」

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この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

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