カーディーラーのECサイト化|新車のネット通販は今後増えて行くのか?元カーディーラー営業マンが解説

スマホで新車を選ぶヤギと、後ろに架空のカーディーラーのショールーム 新車購入
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皆さんこんにちは。元カーディーラー営業マンです。

「最近は本屋もビデオ屋もめっきり減ったなぁ」と思いながら、Amazonで日用品や本を買い、Amazon Prime Videoで映画を見て、YouTube Musicで音楽を聴いている私です。人間は時代の変化になじんでいく生き物だと、つくづく実感します。

なんせ私の新人営業マン時代は、携帯電話ではなくポケベルでしたからね。公衆電話にテレフォンカードや硬貨を入れて、冬の寒い夜に凍えながら電話していたのを懐かしく思い出します。

ポケベルが鳴って公衆電話に駆け込む新人営業マン時代のヤギ

さて、こんな便利な時代ですから、「新車もネット通販で買える時代がそろそろ来るかな」と思っていたら、もう来ていました。アメリカのテスラのネット販売は有名ですが、日本の自動車メーカーでもネット通販の動きが始まっています。

今回は、新車のネット通販が今どこまで進んでいるのか、ネットとお店ではどちらが得なのか、そしてこれからカーディーラーはどう変わっていくのかを、35年以上お店の中から見てきた元営業マンの目線で解説していきます。

※各社のサービス内容は、2026年10月時点で公式サイトや報道で確認した情報です。内容は変わることがあるので、利用する前に必ず各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。


今、新車はどこまでネットで買えるのか

結論から言うと、ネットで契約まで済ませられる新車は、すでにあります。ただし、メーカーによって仕組みがかなり違います。主なところを表にまとめました。

メーカー・サービスネットでできること特徴
テスラ公式サイトから注文メーカーが直接売る直販スタイル。新車ネット販売の先駆け
ヒョンデオンライン販売が中心2022年に日本市場へ再参入。お店をたくさん構えない売り方を選んだ
ホンダ(Honda ON)見積もりから契約・支払いまで2021年10月開始。国内の自動車メーカーで初めての新車オンラインストア
日産2021年11月、EV「アリア」でオンライン注文を開始現金一括・クレジットに対応。車庫証明などの書類は販売店がサポート
トヨタ(KINTO)ネットで申し込めるサブスク車を買い取るのではなく、月々定額で乗る仕組み

ひとくちに「ネットで買える」と言っても、現金やローンで「買う」のか、月額で「借りる(サブスク)」のかで中身は別物です。ここは最初に区別しておくと、情報を調べるときに混乱しません。

国内メーカーでは「Honda ON」が頭一つ抜けている

国内メーカーの中で、私が頭一つ抜けていると思うのがHonda ON(ホンダオン)です。2021年10月4日に東京都内からスタートした、国内の自動車メーカーとして初めての新車オンラインストアで、見積もりから契約、支払いまでをスマホやパソコンで済ませられます。運営は、ホンダが100%出資する販売会社のホンダセールスオペレーションジャパンです。

ただ、ネットで調べると「N-BOXやフィットなどの人気車種が買える」という情報をまだ多く見かけます。これは始まった当時の話です。2026年10月に公式サイトで確かめたところ、今の顔ぶれはこうなっていました。

プラン中身選べる車種
一括払いプラン申込金30万円をクレジットカードで払い、残りは納車の時期が決まってから銀行振込PRELUDE/INSIGHT
バリュープラン(サブスク)車検・メンテナンス・税金などをまとめた月々定額。申込金は3万円N-VAN e:/N-ONE e:/INSIGHT/Super-ONE

このほか、残クレ(残価設定型クレジット)も選べるようになっています。

つまり、現金一括でネット購入できるのは、今は2車種だけ。取り扱いの中心は電気自動車(EV)と、少し特別なモデルです。N-BOXやフリードのような売れ筋は、今はお店で買う車になっています。

元営業マンとして、ここは面白いところだと思います。「何でもネットで売る」のではなく、「ネットと相性の良い車はネットで、売れ筋はお店で」と、役割を分けているように見えるからです。

【申し込む前に必ず知っておいてほしいこと】Honda ONの公式サイトには、申込金を決済したあとは、選んだお店や契約内容の変更、キャンセルを一切受け付けないと書かれています。30万円を「予約金」のような軽い気持ちで払うと、あとで困ります。ネットはボタン一つで進めてしまえるからこそ、申し込む前の確認が大事です。利用できる地域やお店も、公式サイトで確認してください。


営業マン時代に見た「お客様の変化」

ここからは、私がお店の中で実際に見てきた話です。ネット通販の仕組みができる前から、お客様の買い方は少しずつ変わっていました。

カタログを持ち帰らないお客様

商談のあと「ネットで見るから要らない」とカタログを断るお客様

私が営業マンとして働いた最後の4〜5年、少数ですが、商談のあとカタログを持ち帰らないお客様が増えてきました。

「ご自宅で比較・検討するのに、困りませんか?」とお聞きすると、返ってきたのは「ネットで見るから要らない。ゴミになるし」という言葉でした。

そのときは「そんな時代か」と思ったものです。ところが今、私自身がまさにそうなっています。あのお客様は、一歩先を歩いていたのかもしれません。

ネットで申し込んでくるお客様は、決まりやすい

お店にネットでカタログ請求や商談の申し込みをしてくるお客様は、成約率が高いというのも実感です。私がいた店の店長いわく、商談申し込みのお客様は3分の2は成約できるとのことでした。

お店に来る前に、ネットで調べて候補をある程度絞ってから来られるからだと思います。

▶ ちなみに、予約なしでふらっと来店される新規のお客様の成約率は、私の感覚で10〜30%ほどです。来店のきっかけごとの違いはカーディーラー営業マンの車の売り方を解説‼|元営業マンが明かす5つのアプローチでお話ししています。

YouTubeで勉強してから来るお客様

事前にYouTubeで勉強してから来店されるお客様も多くなりました。おかげで、試乗のときの説明の手間が減ったように思います。営業マンが一から説明しなくても、お客様のほうが装備や乗り味のポイントをつかんで来られるのです。

値引きの「相場」を知って来るお客様

値引きについても、平均的な相場の情報を持って来店される方が増えました。そういうお客様は、もうあと少しの付加価値を付ければ契約してくださることが増えました。

昔は違いました。お客様ご自身の根拠のない値引き基準で値切られることも多かったものです。お互いに相場が分かっている今のほうが、話は早くまとまります。

それでも今は「ネットで調べて、お店で買う」が大半

ネットで車を調べてから、お店で試乗するヤギ

とはいえ、今はまだほとんどの方が、ネットでリサーチして、お店で試乗・見積もり・契約という流れです。ネットは「調べる場所」、お店は「決める場所」。これが、私が現場で見てきた今の姿です。


数字で見る「ネットで新車を買った人」

私の実感は、数字にも表れています。カーリースなどを手がけるジョイカルジャパンが2024年1月に行った調査(新車を2台以上買ったことがある550人が対象)では、こんな結果が出ています。

  • オンラインで新車を買ったことがある人は1割未満
  • ただし、買った人の9割が満足
  • オンライン購入に「肯定的」な人は22.3%、「否定的」な人は55.5%
  • 肯定的な理由の1位は「実車はディーラーなどで確認すればよいから」(56.1%)、2位は「店舗に出向くことなく新車を購入できるから」(54.5%)

ネットで買う人はまだ少ない。でも、使った人の満足度は高い。そして肯定派の人でさえ、「実物はお店で確かめればいい」と考えている。ネットとお店を使い分けるという今の買い方が、そのまま数字に出ていると感じます。


ネットとお店、結局どちらが安いのか

一番気になるのはここだと思います。正直に言うと、どちらが安いかは人によって変わります。比べるポイントは4つです。

① 値引き

ネット通販は、画面に出た金額で買う仕組みです。営業マンと向き合う商談がないので、値引き交渉の場面そのものがありません。一方、お店では時期や条件しだいで値引きを引き出せる余地があります。

ただ、交渉が苦手な方がお店で買っても、思ったほど値引きが出ないこともあります。相場を知って、気持ちよく交渉するのがコツです。

▶ 値引きの限界額と、好印象のまま引き出す方法は元カーディーラー営業マンが教える新車値引きの限界額とは?にまとめています。

② 下取り

ネットで新車を買う場合でも、今の車をどうするかは別に考える必要があります。お店に下取りを任せるか、買取店に売るか。どちらにしても、新しい車の納車日と、今の車を手放す日を合わせる段取りが要ります。

▶ 下取り価格がどう決まるのかは下取り価格の謎|ディーラー査定の仕組みを元カーディーラー営業マンが徹底解説で詳しく書いています。

③ 試乗

ネットで買える車でも、試乗はお店でできます。車の大きさ、シートの座り心地、家族が酔わないかは、乗ってみないと分かりません。数百万円の買い物です。ここは手間を惜しまないでください。

▶ 試乗でどこを見ればいいかは試乗車の正しい乗り方を元カーディーラー営業マンが解説をご覧ください。

④ 支払い方法

「せっかくならクレジットカードで全額払って、ポイントを貯めたい」と考える方もいるかもしれません。ですが、Honda ONでもカードで払うのは申込金の30万円だけで、残りは銀行振込です。数百万円をカードで払うと、売る側がカード会社に払う手数料が大きくなるためだと考えられます。新車をカードで全額払うのは、ネットでもそう簡単ではないと思っておいてください。


これからネット通販は増えていくのか|元営業マンの見立て

私は、ネットで買える車種が増えれば、利用する人は確実に増えると思っています。忙しくてお店に行けない人や、そもそもカーディーラーに出向いて商談したくない人は、ネットで買うでしょう。

ただし、家電のように「ポチッと買って終わり」にはならないと思います。車には、ネットだけでは済まないことが残るからです。

  • 試乗やサイズの確認…自宅の駐車場に入るか、運転しやすいかは実物で確かめるしかない
  • 登録の手続き…車庫証明やナンバーの登録など、書類のやり取りがある
  • 点検・車検・修理…車は、お店や整備工場に持ち込まないと整備できない
  • 今の車の下取り・売却…実物を見て査定する必要がある

実際、Honda ONでも、納車や点検は自分で選んだHonda Carsのお店で受ける仕組みです。ネットで買っても、車と付き合う場所はお店に残ります。

ですから、これからは「調べる・契約する」はネット、「確かめる・整備する」はお店という役割分担が進んでいく。これが私の見立てです。


営業マン・メカニック・事務の仕事はどう変わるか

営業マン|「売り込む人」から「相談に乗る人」へ

お客様がYouTubeで調べ、値引きの相場も知って来られる時代です。営業マンに求められるのは、カタログの説明や駆け引きではなく、最後のひと押しになる「あと少しの付加価値」です。家族構成や使い方に合った提案、納車後の困りごとへの対応。人にしかできない部分が、営業マンの仕事として残っていくと思います。

▶ 営業マンが平日にショールームにいる今の時代ならではの、お店の賢い使い方はカーディーラー営業の販売スタイルはこう変わった|元営業マンが語る昔と今、そして賢い活用術で紹介しています。

メカニック|ネットで買った車も、整備はお店で

今の車は電子制御のかたまりです。不具合を調べるにも、専用の診断機をつないでデータを読み取る作業が増えています。そして、ネットで買った車でも点検や修理はお店で行います。メカニックの仕事は、ネット通販が増えてもなくなりません。むしろ、車に詳しい人として、お客様に直接説明する場面は増えていくと思います。

事務|紙の書類から、電子の手続きへ

Honda ONでは、契約書へのサインも電子契約で行います。車の登録も、ネットで申請できる「ワンストップサービス(OSS)」が広がってきました。紙の書類を何枚も書いて、印鑑をもらって回るという事務の仕事は、少しずつ形を変えていくでしょう。


「写ルンです」のように、お店の価値が見直される日

Amazonが町の本屋さんに、ネット配信がビデオ屋さんに取って代わっていったように、車の売り方も変わっていくと思います。一方で、私が気になっているのが「写ルンです」です。

1986年に発売された写ルンですは、1997年をピークに売れ行きが落ちていきました。ところが2021年ごろから若い世代を中心に人気が戻り、2026年7月には発売40周年として、20年ぶりの新商品も発表されています。撮れる枚数が限られているから一枚を大事に撮る。現像するまで写りが分からないワクワク感がある。不便さそのものが、価値として見直されているのです。

車のお店にも、同じことが起きると思います。ネットで買えるのが当たり前になるほど、人に相談できる、実物に触れられるお店の価値は、かえって上がっていくのではないでしょうか。

私は、最後は対面で買います

では、私自身はどうするか。やっぱり最後は対面で買いますね。お店に行くと、ついカーディーラーのいろいろな所を観察してしまいます。元営業マンの職業病かもしれません。

新車は、人生で何度も買うものではありません。だからこそ、ネットで調べ尽くしたうえで、最後は実物を見て、人と話して決める。それも十分に合理的な買い方だと思います。

▶ そもそも新車は生涯で何回買えば足りるのかは新車購入は人生で3回でOK!?その理由を元カーディーラー営業マンが解説で、私自身の9台の経験から書いています。


まとめ|変わらないものは「変化」だけ

  • 新車のネット通販は、すでに始まっている(テスラ・ヒョンデ・Honda ON・日産・トヨタのKINTOなど)
  • 国内メーカーではHonda ONが一歩先を行く。ただし現金一括でネット購入できるのは、2026年10月時点でPRELUDEとINSIGHTの2車種。申込金30万円は払ったあとキャンセルできない
  • ネットで新車を買った人はまだ1割未満。でも、使った人の満足度は高い
  • 値引き交渉ならお店、手間の少なさならネット。試乗・下取り・整備は、ネットで買ってもお店とのつながりが残る
  • これからは「調べる・契約はネット、確かめる・整備はお店」の役割分担が進んでいく

ポケベルからガラケー、そしてスマホへと進化していったように、カーディーラーの在り方も、皆さんの車の買い方も、車の使い方も、時代とともに変化していくと思います。

「人生で唯一変わらないものは、変化である」という言葉のとおり、世の中の発展とともに車業界もカーディーラーも発展し、皆さまのカーライフが豊かなものになるよう、元カーディーラー営業マンとして願っています。

この記事が参考になれば嬉しいです。楽しいカーライフをお過ごしください。


この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)
35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

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