皆さんこんにちは、元カーディーラー営業マンです。皆さんは車を検討するときに、友人や知人に営業マンの紹介をお願いしたり、逆にお願いされたりしたことはありますか?
以前の記事カーディーラー営業マンの車の売り方を解説‼|元営業マンが明かす5つのアプローチで紹介販売について少し触れましたが、本来、紹介販売の成約率は50〜100%と非常に高いものです。紹介者によっては、ほぼ100%という場合もあります。
ではなぜ、これほど高い成約率なのに50〜100%とブレ幅が大きいのか。35年以上カーディーラーで営業をしてきた私の結論は、ひとつです。
商談の成功も失敗も、実は「紹介者の質」でほぼ決まります。そして、その質を決めているのは紹介者ではなく、営業マン自身です。今回はそこを掘り下げます。
先に結論を書いておきます。
- 同じ「紹介客」でも、30分で決まる商談と、値引きの当て馬で終わる商談がある
- 差を生むのは営業マンと紹介者の人間関係の密度。紹介者の年齢や立場ではない
- 「紹介者の質が低い」は、裏を返せば営業マンのコミュニケーション不足
- 紹介者と紹介された方は、同じテンションでは来店しない。固定観念は捨てる
- 買う側の読者へ。紹介だから安くなるとは限りません。断り方も先に決めておく
販売ルート別の成約率|紹介がずば抜けて高い理由

まず、営業マンがお客様と出会うルートごとに、成約率がどれくらい違うのかを見てください。数字は私が35年以上の現場で感じてきた肌感覚です。
| 出会い方 | 成約率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| ご紹介 | 50〜100% | 信頼を引き継いだ状態で商談が始まる |
| 既存客の乗り換え | 高い | 車検・点検のたびに接点がある |
| 増車のご相談 | 高い | 家族構成の変化がきっかけ |
| 新規来店・Web問い合わせ | 10〜30% | 他社と比較検討の途中。数で勝負 |
新規のお客様は、これから資料を集める方もいれば、すでに数社を回って見積もりを取り終えた方もいます。千差万別なので、どうしても数で勝負することになります。
ところが紹介のお客様は違います。「あの人が勧めるなら」という信頼を持った状態で来店されます。営業マンにとって、これほどありがたい出会い方はありません。
紹介販売の比率に、公表された統計はありません
ひとつ正直にお伝えしておきます。「全国のディーラーで紹介販売が何%か」という公表された統計は、調べた範囲では見当たりませんでした。業界のコンサルティング記事などでは数%から10%程度という数字を見かけますが、出典がはっきりしません。
ただ、現場の感覚で言えば、紹介の比率は営業マンによって驚くほど差が出ます。新人のうちは年に数台あるかどうか。お客様が増えてくると増え、いわゆるトップセールスになると、販売台数の多くを紹介と既存客の乗り換えが占めるようになります。店頭で新規のお客様を待つ必要が、だんだん減っていくのです。
ちなみに、ディーラーの集客が厳しくなっているのは数字にも出ています。2024年にカーシェアサービスのエニカが自動車ディーラー・メーカーの90名に行った調査では、90%が集客に危機感を感じていると答えています。課題の上位は「チラシ・DM・イベントなどの効果が低迷」が56.8%、「若者のクルマ離れによる自然来客の減少」が55.7%でした。
自然に人が来なくなるほど、紹介という出会い方の価値は上がっていきます。
同じ紹介客なのに、なぜここまで差が出るのか

私の体験で言えば、紹介客は紹介者次第です。良くも悪くも、紹介者の影響を大きく受けて来店されます。
絶大な信頼関係のもとで来店され、短時間で商談がまとまる方もいます。一方で、単に値引き交渉のために、その他大勢の営業マンの一人にされてしまうこともあります。同じ「ご紹介です」という電話から始まっているのに、結果はまるで違います。
なぜこんなに差が出るのか。考えてみると、やはり営業マンと紹介者の人間関係の密度の差が大きいのです。
紹介者のタイプ別に見た、成約率の目安
紹介者がどんな気持ちで紹介してくださったかによって、商談の入り口はここまで変わります。
| 紹介者のタイプ | 紹介の動機 | 成約率の目安 |
|---|---|---|
| 長年のお得意様・熱心なファン | 担当者を応援したい | 非常に高い |
| 納車直後で満足度の高いお客様 | 嬉しさを人に話したい | 高い |
| ご家族・ご親族 | 身内に良い買い物をさせたい | 高い |
| 義理・お付き合いの紹介 | 頼まれて断れなかった | 新規来店と同じ程度まで下がる |
一番下の「義理の紹介」が曲者です。紹介者が相手の状況を確かめないまま名前と電話番号だけを教えてくれたケースで、紹介された側は「断れないから一応話を聞くだけ」という状態で来店されます。
質の高い紹介者は、意識しなくても相手の状況を確かめたうえでつないでくれます。「そろそろ車検だと言っていた」「子どもが生まれて狭くなったと言っていた」という具合です。この一手間があるかないかで、商談の入り口がまるで変わります。
質の低い紹介で、現場に起きること
義理の紹介が増えると、営業マンの現場では次のようなことが起こります。
- 成約率が新規来店と変わらなくなる。紹介の看板だけがあって、中身は飛び込みと同じです
- 時間と準備が無駄になる。試乗車を押さえ、見積もりを何パターンも作った末に「まだ買う気はない」と言われます
- 紹介者との関係にヒビが入る。「せっかく紹介したのに」「しつこく営業された」と、三者の間に不満が残ります
- 値引き合戦になる。人への信頼が軸にないので、「他店より安いなら買う」という条件だけの話になります
ここで営業マンが陥りやすいのが、「今回の紹介者はハズレだった」と紹介者のせいにすることです。私も若い頃はそう思っていました。しかし、これは間違いです。
紹介者の質が低いというのは、裏を返せば営業マンのコミュニケーション不足ということになります。自分自身も、本当に気に入ったものやサービスがあれば、自然と熱量を持って人に勧めていますもんね。お客様が熱量を持って勧めてくれないのは、その熱量を生めなかった側の問題です。
▶ 紹介をお願いするタイミングや、商談中の具体的な頼み方はカーディーラー営業マンの車の売り方を解説‼|元営業マンが明かす5つのアプローチの「④ご紹介をいただく」で解説しています。
紹介者の年齢は関係ない|私が反省した話
紹介者の質について、私が思い込みで損をしていた話をします。
私は最初、「若い方だから、ノリで紹介してくれたのだろう。こんなものか」と思っていました。年配のお得意様の紹介こそ本物で、若いお客様の紹介は軽いもの、という決めつけです。
これは完全に間違いでした。
若い方が本当に営業マンや車、店舗やスタッフを気に入ってくれたら、紹介の数もスピードも年配の方を上回ります。友人に会う回数も多く、連絡も速い。「今度あいつが車探してるから、今から電話していい?」という具合に、その日のうちに話が動くこともあります。
紹介者の年齢は関係ありません。関係があるのは、その人がこちらをどれだけ気に入ってくれているかだけです。
質の高い紹介をいただくために、営業マンができること
では、紹介の質を上げるために営業マンは何ができるのか。私の経験から、効くと思うことを3つ書いておきます。
① 頼み方を、具体的に絞る
「誰か車を探している人がいたら紹介してください」。これが一番多い頼み方で、一番効きません。お客様にしてみれば、誰の顔を思い浮かべればいいのか分からないからです。
そうではなく、条件を絞って伝えます。「車検の見積もりが高くて悩んでいる方」「お子さんが生まれて車が狭くなったという方」「そろそろ免許を取るお子さんがいるご家庭」。こう言われると、お客様の頭に具体的な誰かの顔が浮かびます。
顔が浮かんだ紹介は、質が高くなります。すでに相手の状況が分かったうえで話してくださるからです。
誤解のないように書いておくと、前の記事で紹介した「お客様の知人や友人でお車を検討の方がいらっしゃいましたら、情報だけで結構ですのでご紹介ください」という依頼の言葉は、紹介の話題を出すための入り口です。点検や調子伺いの場面で、まずこの一言を置く。そのうえで「たとえば車検の見積もりが高くて悩んでいる方など」と条件を添えると、お客様の頭に顔が浮かびます。入り口と絞り込みは、セットで使うものです。
② 特典で釣らない
紹介特典としてギフト券などを用意している店舗は多いと思います。私も渡していました。ただ、特典を前面に出して頼むと、かえって質が下がります。
理由は単純で、動機が変わってしまうからです。「友人に良い買い物をさせたい」で動いてくださる方と、「特典がもらえるなら」で動く方とでは、連れてきてくださる相手がまったく違います。後者は相手が車を買う気かどうかに関係なく、とりあえず連絡先を教えることになりがちです。
特典はお礼として後から渡すもので、紹介を引き出す道具ではありません。
ひとつ補足します。商談の最後に値切られたときに、「この金額にさせていただく代わりに、納車後に車を気に入っていただけましたら、1台だけご紹介ください」とお願いする方法があります。私も使ってきましたし、前の記事でも書きました。これは特典で釣るのとは別物です。
違いは「気に入っていただけましたら」という条件が入っているところです。気に入っていただけなければ紹介は出ませんし、義理で出てきたとしても質は低いままです。結局は、納車してからの仕事に戻ってきます。
③ 紹介が出るのは、売った後の仕事で決まる
これが一番大事です。紹介は、契約したときではなく納車してからの仕事で決まります。
納車の説明が丁寧だったか。1か月点検の連絡がきちんと来たか。トラブルのときにすぐ動いたか。お客様が人に話したくなるのは、値引きの金額ではなくこうした場面での対応です。値引きの話は、人に自慢することはあっても、営業マンの名前とセットでは語られません。
逆に言えば、紹介が出ない営業マンは、売った後の仕事が薄いということです。厳しい言い方ですが、私が現場で見てきた実感です。
紹介者と紹介された方は、同じテンションでは来ない
もうひとつ、営業マンが気をつけなくてはいけないことがあります。必ずしも紹介者と同じテンションで、紹介された方が来店されるわけではないということです。
紹介者が気さくで人見知りをしない豪快な方でも、紹介された方はその真逆ということがあります。職場の上司が部下を紹介してくださったときなどに、よくあります。上司の勢いで来店されただけで、ご本人はまだ何も決めていない、ということも珍しくありません。
逆もあります。紹介者が無口であまりご自身のことを話さないタイプでも、紹介された方はよく話す方だった、ということもあります。
営業マンの立場としては、固定観念を持たずに臨機応変に対応していくことが、紹介された方との距離を縮めることになります。「紹介者がこういう方だから、この人もこうだろう」という準備は、かえって邪魔になります。
紹介された側にも、営業マンとの相性がある
信頼している方からの紹介で来店されても、営業マンとの相性が合わなければ商談は止まります。紹介された方にも、営業マンに対する第一印象がありますから、当然のことです。
相性が問題になりやすいのは、だいたい次の3つです。
- 感覚を大事にする方と、数字で納得したい方。デザインや乗り心地で選びたい方にスペックの比較ばかり並べると、話が噛み合いません。逆もまた同じです
- 引っ張ってほしい方と、自分のペースで決めたい方。後者に積極的に提案すると、ただのプレッシャーになります
- 連絡手段。メールやSNSでやり取りしたい方に電話を重ねると、それだけで距離ができます
ここで大事なのは、紹介者が気に入った点と、紹介された方が求める点は違うということです。紹介者は営業マンの熱心さや頼りがいを気に入って紹介してくれたのに、紹介された方は静かで落ち着いた対応を好むタイプだった。よくある話です。
紹介されたからといって自分のやり方を押し付けず、相手に合わせて変えられるかどうか。紹介販売で結果を出す営業マンは、ここが柔らかいのです。
▶ 担当営業マンとどうしても合わないと感じたときの対処法は担当営業マンと反りが合わない|営業ガチャハズレだと感じたら・・・で解説しています。
成約しても、しなくても|紹介者への報告とお礼は必ず

紹介が成約できても、できなくても、非常にありがたいことです。私は必ず、紹介者への結果報告とお礼をするように心がけてきました。
これは礼儀の話だけではありません。決まらなかったときこそ、報告が効きます。
「今回はタイミングが少し先になりそうでした。お気遣いいただいて、ありがとうございました」と伝えておくと、紹介者も状況が分かります。次にご紹介いただくときの精度が上がりますし、何より紹介者に気まずい思いをさせずに済みます。連絡がないまま放っておかれるのが、紹介者にとって一番嫌なものです。
買う側の方へ|紹介される立場になったときの注意点
ここまで営業マン側の話を書いてきましたが、読者の皆さんの多くは紹介される側だと思います。売る側にいた人間として、正直にお伝えしておきたいことが3つあります。
① 紹介だから特別に安くなる、とは限りません
「紹介なら安くしてもらえる」と期待される方は多いのですが、値引きの原資は紹介かどうかでは決まりません。時期や車種、その月の状況で決まります。
紹介で本当に得られるのは、金額よりも対応の丁寧さと、その後の付き合いやすさです。紹介者の顔が立つように、営業マンは普段以上に気を配ります。納車後の点検やトラブルのときに動きが速いのは、実はここです。
▶ 値引きがどこまで出るのか、その限界額の考え方は元カーディーラー営業マンが教える新車値引きの限界額とは?で解説しています。
② 断るときは、紹介者ではなく営業マンに直接、早めに
紹介で一番気まずいのが、断り方です。紹介者に「あの話、断っておいて」と頼むと、紹介者が板挟みになります。
営業マンに直接、早めに伝えてください。「今回は他社に決めました」「時期を先に延ばします」の一言で十分です。理由を細かく説明する必要はありません。営業マンは断られることに慣れていますし、早く分かるほうが助かります。曖昧なまま連絡が途絶えるのが、お互いにとって一番よくありません。
③ 相性が合わなければ、担当を替えてもらって構いません
紹介してもらった手前、担当を替えてほしいとは言いにくいものです。しかし車は高い買い物で、付き合いは納車後何年も続きます。
どうしても合わないと感じたら、店長に相談して構いません。紹介者の顔をつぶすことにはなりません。むしろ、合わないまま無理に進めて途中で止まるほうが、紹介者に迷惑がかかります。
まとめ|紹介販売は営業の醍醐味であり、やりがい
先輩営業マンが言っていました。紹介販売こそ営業の醍醐味であり、やりがいであると。確かに、お客様が次のお客様を連れてきてくださるそのスタイルは、営業の王道と言っても過言ではないでしょう。
- 紹介の成約率は50〜100%。ただし紹介者の質でブレる
- 質を決めるのは営業マンと紹介者の人間関係の密度。年齢や立場ではない
- 質が低いと感じたときは、自分のコミュニケーション不足を疑う
- 紹介者と紹介された方のテンションは違う。固定観念を持たない
- 成約してもしなくても、紹介者への報告とお礼は必ず
- 買う側は、紹介でも値引きは別物。断るときは直接、早めに
ただ、現在の販売スタイルは新規来店のお客様も重要視するようになってきています。従来の乗り換えや増車も含めて、カーディーラー営業マンとお客様との関係が、より良いものになることを願っています。
そしてもし皆さんが、知人に営業マンを紹介したいと思える日が来たなら。その営業マンは、間違いなく良い仕事をしたということです。その一言が、営業マンにとって何よりの評価になります。
この記事を書いた人:元カーディーラー営業マン(現・再雇用サラリーマン)35年以上、カーディーラーの営業マンとして数千人のお客様の車選びをサポート。3年前に定年退職し、現在は同じ会社の別部署で勤務中。現場で見てきたリアルな情報を発信しています。

